
長編
ウサギ穴
匿名 6日前
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面に、穴はあった。同じような穴だった。見つけたのは僕だった。かくれんぼをしていて偶然見つけたのだ。
「穴ー。あなー!」
と叫ぶと、みんなが集まって来た。ほら見ろやっぱりウサギだった。いや、へびだ。違うモグラだ。
そんな不毛な言い争いのあとだった。誰が言ったのかは忘れた。僕だったのかもしれない。まあ、とにかく、誰かが言った。
「じゃあさ。この穴によ、ウサギ入れてみん?」
よし、やってみようぜ。面白いかは二の次だぜ。何てたって僕ら小学生だぜ。でも今は少し後悔している。
僕の通っていた学校では、ウサギを飼育していた。そして学年には一人ずつ(※クラスは無いよ。全校生徒八十人くらいだったから)、飼育委員というのがいて、昼休みになるとウサギに餌をやったりするのだ。
そして何と、その時の五年生の飼育委員が、僕だったのだ。
決行されたのは、次の日だった。昼休み。僕は『チャーボー』と名札の貼られた檻を開けて、茶色い毛がボーボーの可愛い兎を一匹抱えて、『ウサギ穴』へと向かった。
到着すると、もう友達の一人は穴で待機していて、反対の県道側の穴の方にも、数人スタンバっているらしい。
友達が、運動場の倉庫から持ってきた五十メートルの巻き尺の紐を、チャーボーの身体に結んだ。命綱のつもりだ。
「チャーボー。ほれ、いけ」
穴の中にチャーボーの頭を突っ込む。チャーボーは嫌がって足をパタパタさせた。無理やり押し込む。それほどきつくはなさそうだけど、無理しないと方向転換は出来ないだろうな。
「はよういけ。帰ってきたら餌やるから」
棒で尻をつつくと、チャーボーは嫌々そうに穴の奥へと進んで行った。
途中で途切れているだなんて考えはなかった。二つの穴は、当然つながっているものだと思っていたのだ。
「よんメートル」
隣で友達が、チャーボーが進む動きに合わせて巻き尺を引っ張り出しながら、一メートルごとにいちいち報告する。
「はちメートル」
当時は、小さな山だったので、学校側の穴から県道側の穴まで、五十メートルも無いだろうと思っていた。今考えると、もう少し距離はあっただろうけど。
僕がふと疑問を覚えたのは、十メートルを過ぎてからだった。
友達が数えるメーター表示の速度がおかしい。
「じゅうさん、……じゅうよん。じゅう……、ああもう早いよちょっと待って!」
ものすごい速さで、巻き尺を回す取っ手が回転して、しゅごおおお、
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