
長編
ウサギ穴
匿名 6日前
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のかどうかは定かではない。
黙っていると、じじいは僕の肩をバシバシと何度も叩いた。
「まあ、気にせんでええ。おまんは山にお供えもんをしただけや。そのうちええことがあるかもしれん」
「じじい……」
「おう、なんぞ?」
「じゃあこづかいくれ」
その日は、じじいの家の軒先に干してあった干し芋を勝手に取って、齧りながら家まで帰った。じじいは結局こづかいをくれなかった。けれど、その内良いことがあると言うじじいの話は、当たってなくもなかった。
僕は、飼育委員をクビになった。理由は皆で飼っていたウサギをうっかり『逃がしてしまった』からだと言う。世話は面倒くさいし、ウサギ小屋は臭いから、僕は普通にラッキーと思った。
ちなみに、『ウサギ穴』は、あの出来事以来、子供たちの間で、『ウサギ喰いの穴』にグレードアップした。そうして、あの日県道側から走って逃げて転んで転がった奴がえらい怪我を負ったので、それから裏山禁止の規制が厳しくなった。
だから一度だけだ。下校時間になって、僕はそっと県道側の穴に向かった。
途中で、落ちていた手頃な木の枝を拾う。
穴に着く。
「くらえ!」
僕は手にした棒を穴に突っ込んだ。そして逃げた。男の子なら誰しもやったことのあるあのワザだ。ささやかな仕返しのつもりだった。その後、山に仕返しされたとかそんな体験はない。
今現在、僕の通っていた小学校は廃校になっている。じじいの家に行く際には、あの県道を通るので、その時はついでに穴はあるかと確認したりする。少なくともヤマノシリは未だにあって。周りには、何の骨か分からない小さな骨が、散らばっていたりもする。
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