
長編
あんたがたどこさ
匿名 3時間前
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うか。辺りをもう一度、見回す。誰も居ない。風の音もしない。さっきまでは吹いてたはずだ。そう言えば、虫の声も聞こえなくなった。
「おーい……」
おーい……、おーい、おーい……
僕はその場に飛び上がった。
Kを呼ぼうと叫んだ瞬間だった。まるでトンネルの中に居るかのように、僕の声が周囲にこだましたのだ。やまびこでは無い。ここは広いグラウンド。後ろに学校はあるが、何度も音が反響するなんて、絶対におかしい。
僕は途端に、怖くなった。
「なあっ、おーいっ!」
二度目。返事は無い。僕の声だけが、辺りにしつこくこだまする。ふと思い至って、ポケットの中の携帯電話を取りだした。
圏外。確かに、さっきまでは使えたのだ。学校の中でSからのメールも受信した。
『別の世界』
Kが言った言葉がふと頭をよぎる。
ここは、もしかして、そうなのか。
あんたがたどこさ。
ここは、どこだ。
小学校の入口に目を向けた僕は、『それ』に気がついて、ぎょっとする。
発作的に走りだしていた。学校の外には車が停めてあったが、鍵は持っていない。それよりも、この小学校は山を少し上った位置にある。ここに来る時、小学校に入るすぐ前の道からは、下の街の夜景が一望できたのだが。
そこは、街を見下ろせる場所。
絶句する。
街が無かった。
いや、正確に言えば、遠目ではあったが、そこに街はあった。ただしその街には、明かりがただの一粒も灯っていなかった。街が、黒い。いくら深夜でも、あり得ない光景だ。
僕は、その場にへたり込んでしまった。ようやく、確信する。僕は、異世界への扉を開けてしまったのだ。
帰る手段は知らない。
ぞわぞわと、ゆっくり、足元から恐怖が這いあがって来る。
どうしよう。
僕は、立ちあがって学校へと戻った。とりあえず、何か考えがあったわけではない。あのままじっとしていて正気が保てるかどうか怪しかったのだ。
学校の校庭。赤錆びた鉄棒、シーソー、回転塔。グランドの中央あたりに、Kが描いた図形。僕はその中に入って、再びへたり込んだ。何をしていいか分からない。Kを探そうか。でも、無駄な気がする。
「わっ!」
意味も無く叫ぶ。こだまする。一体何なんだこの反響音は。僕は、もっともっと、遮二無二叫びたい衝動を懸命に押し殺した。
駄目だ。冷静になれ。人は考えに考えた末、壁をよけて通ることを覚える。これはたしか友人のSが気に入ってい
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- めっちゃ怖かったです、けど、戻れてよかったですね結
- 私も、危険というレッテルをどこかに貼ってみたいですね ところでレッテルってどこかに売ってるのでしょうか ホームセンターや文具・雑貨店などでは見たことがありません Amazonでもレッテルという商品はありませんでしたあ
- これ、なつのさんの奴だよね?肉団子
- 創ったにしても好きだわ、この手の話。でもよく手毬唄で戻れるって気付いたなぁ。自分だったら試しもしないかも。kayaro
- 何で友人と電話してるのに目の前で話してるんだ?名無し
- 本当にあった訳ないじゃない 文章が上手いですね
- 素晴らしい。だっち
- 本当に有ったんですか? 電波関係なく写真や動画撮って欲しかったですね!!