
短編
廃墟のドライブイン
匿名 2日前
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昔日本全国の廃墟を写真に収めて回っていた時期がある。
某県某所に潰れて数十年が経過したドライブインがあった。
その日はとても霧が濃い日で、俺は視界が悪い中、山道を運転し、そのドライブインに向かった。
たどり着いて外観なんかを撮影し終え、さて中に入ろうかと、割れた窓から屋内へ侵入した。
このドライブインは二階建てで、まず俺は一階部分の撮影を始めた。
撮影し始めてから少ししたとき、二階から断続的に物音が響いていることに気が付いた。
稀に廃墟に住み着く浮浪者がいる。
俺はこの時も浮浪者が住み着いているのだと思った。
ヤバい人間だったら怖いので、俺は階段の下から二階に向かって声を張り上げた。
「すみませーん! 誰かいらっしゃいますかー!?」
返事はなかったが、相変わらず何かを引きずったり、歩き回ったりするような音が階段の上から響いてくる。
「おじゃましてますー! 写真だけ撮ったらすぐ帰りますんで、二階上がってよいでしょうかー!?」
相変わらず返事はなかった。
ただ、何か固いものを床に打ち付けるような音が、
ゴン・・・・・ゴン・・・・・・・・ゴン・・・・・・
「すみませーーん!!」
ゴン・・・・・ゴン・・・・ゴン・・・ゴン・・ゴン、ゴン、ゴンゴンゴン
(近づいてきてる!!)
ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン!!!
振動が伝わるぐらい大きな音がすぐ階段の上まで迫ってきていた。
俺はとっさに走り出し、侵入してきた割れた窓から外に飛び出した。
車まで走っていき、後ろを振り向かずにエンジンをかけてその場を後にした。
ふと気づくと、割れた窓で手のひらをざっくり切ってしまっていた。ひどい流血だった。
あとから聞いた話。
あのドライブインでは昔から、誰もいない二階から人の足音や話し声が聞こえてくるという噂が絶えないそうだ。
あの日俺が聞いた異様な物音も、もしかしたらその類のものだったのかもしれない。
この怖い話はどうでしたか?
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