
俺は今、普通の大学1年生。これは俺が高2の夏の夜に、学校の美術室で体験したガチで最悪な過去の話だ。
なぜ今になってこの話を語る気になったかというと、最近、母校の部活の後輩から「先輩の時、美術室で何かありましたか?」と、怯えたLINEが届いたからだ。
あそこには、今もまだ「アイツ」がそこにいる。そして、後輩たちの間で、今もその恐怖が語り継がれている。
高2の夏、課題の制作が終わらず、夜22時を過ぎた美術室に一人で居残っていた時のこと。
誰もいない静まり返った室内で、制作中のキャンバスの裏側からトントン、トントンと奇妙な振動を感じた。
直後、白いキャンバスの中央から「赤黒い液体(血液)」が染み出し、バリバリと凄まじい音を立てて内側から引き裂かれた。そこから床へ溢れ落ちてきたのは、大量の「剥がれた人間の爪」と「髪の毛」だった。
パニックで美術室を飛び出し、夜の敷地内を走ったが、背後から衣服が擦れる音だけが聞こえる、足音のいっさいしない「無音の足音」が迫ってくる。
振り返ると、両手両足の関節が逆に折れ曲がったクモのような姿勢の異形(真っ黒な顔に細長い白目)が、無音で這い回り、爪と血を貪り食いながら突進してきた。
近くの宿直室へ逃げ込んで鍵をかけたが、鉄扉をガンガンと頭で打ち付ける強烈な音と共に、脳内に直接、親友の声で「〇〇(俺の名前)、一緒に絵描こうよ!おいで」と抑揚のない声が響く。自分の名前を意識したら終わる禁忌の中、指を噛み締めて一晩を耐え抜いた。
朝になり助かった俺だが、後日、あの破かれたキャンバスの木枠の裏に、赤黒い塗料で『このキャンバスを最初に見つめたお前が、次の私の絵の具(こども)だよ』と刻まれていたことを知る。
俺はそのまま何とか卒業して大学1年になったが、あの美術室のキャンバスは、今も形を変えてあの部屋に残り続けている。
後輩の話では、今でも夜遅くに美術室の前を通ると、中から足音のいっさいしない「無音の気配」がドアに向かって近づいてきたり、誰もいないはずの室内から「キャンバスを激しく引き裂くバリバリという音」が聞こえてくるらしい。
後日談:
- 高校を卒業し、普通の大学1年生になった俺の元に、部活の後輩からLINEが届いたのは先週のことだった。 「先輩の時、美術室で何かありましたか?」 後輩が言うには、最近、夜遅くに美術室の前を通ると、中から**「バリバリバリッ」と、何か頑丈な布を力任せに引き裂くような異様な音が聞こえてくるのだという。それだけではなく、誰もいないはずの美術室のドアのすりガラスの向こうに、「両手両足を異常な角度に折り曲げた、真っ黒な人影」が張り付いているのが目撃され、学校中で噂になっているらしい。 アイツは、今もあの美術室にいる。俺は確信した。 だが、本当に血の気が引いたのは、その後、後輩が送ってきた別のLINEのメッセージを見た時だった。 『実は昨日、怖くなって途中で制作をやめて帰ったんですけど、今朝美術室に行ったら、俺が描いてた油絵のキャンバスが内側からめちゃくちゃに破られてて……。 しかも、木枠の裏側に、赤黒い塗料でびっしり文字が書かれてたんです。 先生たちは誰かの悪質ないたずらだって言って隠そうとしてるんですけど、俺、スマホで写真撮っちゃいました』 画面に添付された写真を開き、俺は息が止まった。 引き裂かれたキャンバスの、あの時と全く同じ木枠の裏側。そこには、俺の時よりもさらに激しい筆跡で、狂ったようにこう書き殴られていた。 『〇〇(俺の名前)がいない 〇〇がいない 〇〇がいない』 奴は、高2のあの夜に俺を取り逃がしてから、ずっとあの美術室のキャンバスの裏で、俺が戻ってくるのを待ち続けていたんだ。 そして、俺が卒業してもうそこにはいないと気づき、今、俺の代わりに新しい「絵の具(こども)」を引きずり込もうと、後輩たちのキャンバスを片っ端から引き裂いて探している。 後輩のLINEは、こう締めくくられていた。 『先輩、あの文字、なんて書いてあるか読めますか? なんだか、誰かの名前を必死に呼んでるみたいなんですけど……』 俺は今、大学の近くのアパートで、スマホの画面を凝視したまま、後輩になんと返信すべきか分からずに震えている。 もし俺が「それは俺の名前だ」と教えてしまったら、その瞬間に、後輩の脳を通じて、奴に俺の居場所が完全にリンクしてしまうんじゃないか。 母校の美術室では、今夜も後輩たちが何も知らずにキャンバスに向かっている。 そしてそのキャンバスのすぐ裏側では、足音のいっさいしない「無音の気配」が、俺の名前を呼びながら、次の獲物をじっと見つめているんだ。 卒業して「自分は逃げ切った」と思った後に、後輩のキャンバスを通じて、あの怪異が今もなお「俺の名前」を探して暴れている
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(0件)
コメントはまだありません。



