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中編

コピペ 幽霊だって遊びたい

匿名 2018年1月21日
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夜の裏通りは不気味だ。いくら三人一緒にとはいっても、やはり気味が悪い。 俺たちは今、塾の帰り道。3台の自転車をたて一列にして走る。 「なーんか、夜の観覧車ってでかく感じるなぁ」 そう、俺たちはそれほど大きくない、地元の遊園地の脇を通っている。 大通りよりも、こっちのほうが近道なんだ。 「あれっ?」 悠介(ゆうすけ)のすっとんきょうな声の共に自転車も止まった。 「なんだよ、変な声出すなよな」 おくびょう物の健太が、ゴクリとつばを飲み込みながらそう言った。 「だってほら、裏口の扉が開いてるぜ」 本当だ。遊園地の裏口が開いてる。 俺はサドルから飛び降りた。 「いっちょ、入ってみるか。誰もいない夜の遊園地なんて、めったに入れないぞ」 俺の言葉に、悠介と健太は顔を見合わせ、ちょっとの間を置いてからこっくりとうなずいた。 三人がそれぞれに自転車のスタンドを立て、鍵をかける。 裏口の扉は、ちょうど俺たちがまっすぐ立って入れるくらいの大きさだ。 大人だったらわ腰をかがめなくちゃ入れないだろうな。 田舎の遊園地だからか、夜は7時までしかやってないんだ。 どこもかしこも照明が消されて、辺りは真っ暗。 だけど..........あれっ? 「なんかさぁ、観覧車、動いてるような気がするんだけど」 健太の言葉に、目の前の観覧車を見上げる。 「本当だ。何だこれ。動いてるじゃん」 「もしかして、係の人が明かりだけを消して、モーターのスイッチを消し忘れたんじゃねえの?」 「そんなドジな話があるかなぁ」 ちょっと信じられなかったけど、現実に動いているものは動いてるんだ。 「ふーん、『事実は小説よりも奇なり』ってやつだな。............おい、これって乗れるんじゃないかな」 そうだ。きっと乗れる。だって観覧車の扉って、係の人が手で開け閉めしてるもんな。 「よっしゃ、確かめてみようぜ」 俺を先頭に柵を乗り越え、観覧車の真下にきた。 そして目の前を通過しようとする観覧車の扉に手をかける。 「おい、開いたぞ。そりゃっ、乗っちゃえ!」 見事成功! 「やった。これ何周してもただだぜ。すげえラッキー!」 悠介も健太も大はしゃぎだ。まあ、俺もだけどね。 とりあえず各自がケータイで、「健太の自転車のチェーンが切れたから修理している。だからちょっと帰りが遅くなる」って電話した。 これでしばらくの間、タダで夜の遊園地が楽しめるってわけだ。 「それにしてもさ、俺たちの町って、やっぱ、田舎なんだな。『夜景が綺麗』とか、全然ないもんな」 「ああ、大通りのあたりしかわかんねえ。あんまり面白くねえな、これ」 ちょっと予想外。と、その時、もっと予想外の事が起きた。 悠介がそうっと人さし指を上げる。 「おい、俺の気のせいかな。俺たちの前のゴンドラに誰か乗ってる」 そんな馬鹿な、と目をこらす。あ、乗ってる。たしかに乗ってる。 髪の長い女の子が1人で。 「さ、さっきは誰も乗ってなかったぜ。お、俺、降りる」 「バカ。どうやってここから降りるんだ」 そんなことを話してるうちに、その女の子がゆっくり俺たちの方を振り向いて、ニヤッと笑った。 「うわぁっ!」 俺たちは三人固まって、床にはいつくばった。 早く、早く一周して、地上についてくれって、それだけを祈ったんだ。 やがて一周したゴンドラから、転がるように俺たちは降りた。 「あ、あれっ、女の子がいない!?」 健太の言う通りだった。間違いなく乗っていたはずの女の子の姿がどこにもない。 「も、もう、帰ろうぜ。出口どこだっけ」 まずい。方向がわからなくなった。 「とにかく歩け」 メリーゴーランドの横を通過する。と、そのメリーゴーランドがいきなり回りだした。 そしてそのつくり物の馬には、白い服を着た人、黒いガウンを着た人、体が半分すきとおった人など、ようするに、その、なんだ.............、 幽霊たちが楽しそうにまたがっているんだ。 「ひぇ〜っ!」 俺たちが腰を抜けた。その場から動けなくなっちまったんだ。 すると、白い馬にまたがった青白い顔の幽霊が、ニヤッと笑いながら言ったんだ。 【人間ばっかり楽しむな。幽霊だって遊びたいんだ。ヒッヒッヒッ】 それから俺たち、その遊園地に行くことはなかった。 もちろん、塾の帰りにはちゃんと明るい大通りを通るようになったんだ。 ああ、怖かった。

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