
長編
暖簾(のれん)の先に
匿名 6日前
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ない。
そしたら、背後から店主の声がした。
「おい、俺君。どうした、寒いから早く戸を閉めないか」
多分、戸と店主の間に俺が立ってる形になったから、店主には見えなかったんだろうな。その異様な足が。
(いやいやいや、助けてくれ!)
叫びたかったけど、声も出ないのよホント。
もう意味分からん恐怖で泣きそうになってきた時、背後からイカツイ声が響いた。
「おい兄ちゃん、暖簾開けんなッ!」
ビクッとしたと同時に、体が動いた。
今思えば、マジであの時のドスのきいたような声は、天使の声と言っても過言じゃないと思うわ。
とにかく動けた瞬間に、救いを求めて振り向いたら、カウンター席で立ち上がりこちらを睨むガテン系のおっさんがいた。
店主を始め、みんなでそのおっさんを見てた。一緒に呑んでたもう一人のおっさんも、ポカンとした顔で見上げてた。
「何もすんじゃねえぞ。くそっ…まさかこんな所で見るとはな」
おっさんは溜め息交じりで呟きながら店主の方を向いた。
「親父、わるいが酒の入った一升瓶と、塩をもらえねえか?」
熊みたいな濃い顔で、威圧的に店主に話した。実はこの人、日は短いけど常連なんだ。でも、初めてこんな威圧的な話し方で話すのを聞いた。
そんなおっさんの後ろで、リーマンが会計済まして、こちらに向かってきた。
「ちょっと待て! 今、出たら駄目なんだよ!」
三十代位のリーマンは、ケータイを耳にあてながら話してて、注意するおっさんをガン無視。
ちょうど、店主が塩と酒瓶を持ってきた。
でも、おっさんは塩と酒瓶を受け取る前に、リーマンが店外へ出ないように肩をつかんで必死に説得してた。
「おい、ホント駄目なんだよ。お前、あの足見えないだろうけど、連れていかれちまうぞ!」
しかしリーマンは電話口に手をあてて、おっさんに向かって叫んだ。
「なんなんだ、あんたたちは⁈ どうせドッキリか何かの番組だろう! こっちは今、会社から至急の用事で呼ばれてんだよ! 付き合ってられるか!」
そういう事らしい。リーマンはおっさんを突き飛ばした。今、書いてて思ったが、よくあの細い体でガタイの良いおっさんをつき飛ばせたなって思った。
多分、既にリーマンは手遅れだったのかもしれないな。
リーマンは、俺の横を通り過ぎた。
俺も思わずその姿を追い、自然と背後の玄関の方に目をやった。
「えっ……⁉」
確かに見た。あの細い足が増えてるんだよ。二人分って言えば良いのかな、あの紫色っぽい
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- あのプーさんも大絶賛!? 熊と若者の心温まるハートウォーミングハートフルきらっとプリキュア的ストーリー。お年を召した老人
- 怖い(*_*)うんこりん
- 足元がおしゃれg
- 神隠し、オシャレ。匿名
- えっ?足? 足だけならよくみるよ?雨音