
長編
メロンが嫌いなのに。
しの 2018年3月31日
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今回は、修学旅行の押し入れの逆さま女の話で登場した私の親友Mの4歳年下の妹Aに起こった話をしたいと思います。
Mは小学六年の終わり辺りにお父さんを病気で亡くし、以来お母さんと4歳下の妹と3人暮らしでした。
高2の夏休みのある日、私はMの家でMと私と1歳年下の後輩Kと3人で遊んでいました。それぞれ漫画を読んだり、テレビを見たりしていると、Mの妹Aがテニスの部活の練習から帰って来ました。
M「おぅ!A!お帰り!」
私「Aー!暑かったやろ?」
K「Aちゃん、ひさしぶり!」
A「…。」
(ん?何で、なんも言わん?部活でなんかあったんかな?)
いつもは明るくて私やKが遊びに来ていると、ニコニコしながら「又、来てるのー?好きだねぇ~!」とか、言って来るAがこの日は人が変わったかの様に無表情で私達と目すら合わせ様とはせず、襖を開けて隣の部屋に入ると凄い勢いで襖を閉めました。
Mは直ぐに襖を開けて「A!なんだよ。その態度!みんな話し掛けてんだろーが!」と、怒鳴りました。それでもAは何も答えず文句を言うMを睨みつけています。
暫く二人は睨み合ったまま。
私「M。A、部活で疲れてんちゃう?そっと、しといたり!」と、そっと襖を閉めました。
M「何なんだよ!あのバカ!」
そこへ、パートからMのお母さんが帰って来ました。
お母さんは私達を見て「あんた達良くそう毎日一緒に居て飽きないわね笑 M。Aも帰って来てるの?玄関に靴あったけど?」
M「隣の部屋!何が気に入らないんだか知らないけど、話し掛けてんのに返事もしねーで!」
母「珍しいね。部活でなんかあったのかしらね」
M「知るか!本人に聞いてみれば!」
このMのお母さん、実はMよりも霊感の強い人なんです。
そんな、やり取りをMとお母さんがしていると
いきなり襖が勢い良く開きました。
Aが、さっきの無表情のまま立って居ました。
手に、メロンを持って。
その姿を見たMのお母さんの顔が険しくなりました。
Aが入って行った部屋にはお父さんの仏壇があり、メロンはお父さんの仏壇にお供えして居た物でした。
メロンを持って立っているAを見て、Mも怪訝そうな顔になりました。
私は小さな声でMに「どないしたん?」と、聞くとMは「おかしい…」と、答えたので「何が?」
M「Aはメロンが小さい時から大嫌い何だよ。匂いすら嫌だ。って、私の前でメロン食べないで!って怒る位なんだ。でも、親父がメロン大好きだったから、お母が仏壇に供えてたんだけど…。メロンが気に入らなくて怒ってんのか?いや。でも、何か違うな。とにかく、おかしい…」
私はMのお母さんが気になり、Mのお母さんに視線を移すと、お母さんは黙ったまま、Aの方へ行き「そのメロン、どーするつもり?あんた、メロン嫌いじゃ無かった?」と、話し掛けました。
A「…。」
(又、無視かよ。どーしたんやろか…)
話し掛けるお母さんを無視して、Aはメロンを持って台所の方へ行くと丸ごとのメロンを包丁で乱暴に真っ二つに切ると水切りカゴにあったお皿に乗せ、スプーンを出し、私達の居る居間に戻って来ると畳にあぐらをかき物凄い勢いでメロンを食べ始めたのです。
呆気に取られる私達。
普段のAは私達とは違って、乱暴な態度を取ったり、あぐらをかいて座ったりする様な子では無かったので。
Mのお母さんは、最初からAの様子がおかしい事に気付いていた様でした。
暫く黙って、メロンをガツガツ食べるAを見て居たかと思ったら、静かな低い声で言いました。
母「誰だよ?お前」
(えっ?えっ?何?誰?ん??)
母「お前、Aじゃないだろ?」
(えーっ!何?何?Aじゃない?Aやろに?意味解らん!泣)
母「答えろ!」
A「…。」メロンを食べ続ける。
母「誰だか、答えろ。Aがメロンを食べるはずが無いんだよ!」
A「フンッ!」鼻で笑う。
母「M!お前、このメロンの食べ方見覚え無いか?」
M「……?あっ!」
母「思い出したか?」
M「…Y…??」
母「そう。お前の幼馴染みのY。今日は何月何日?」
M「8月30日…。Yが死んだ日だ…」
母「お前、忘れてたんだろ?今、Aの中に居るのは4年前に亡くなったYだよ。お前が自分をスッカリ忘れてお墓参りにも行かなくなったから、Aの中に入って来たんだよ。Yはメロンが大好きだったはず。」
Mには幼稚園の頃からずっと一緒だった幼馴染みのYと言う男勝りな性格の子が居たのですが、4年前に交通事故で亡くなって居たのです。Yは果物の中でメロンが一番好きでMは
メロンを持ってお墓参りに行って居ました。
でも、2年、3年経つ内に段々と行かなくなり最近ではYの事を思い出す事すら少なくなって居たのです。
M「お母。Yは怒ってんのか?」
母「いや。寂しがってるんだよ」
M「どーしたら良いのかな?」
母「とりあえず、父さんの仏壇にお線香上げ手を合わせて来な」
M「解った」
Mは隣の部屋に行き、お父さんの仏壇の前に座るとお線香を上げて、手を合わせ何やら一心に祈って居ました。
すると、今までメロンをガツガツ食べて居たAが、ガタンッと机に突っ伏して意識を失いました。
Mのお母さんは、Aの肩を優しく叩きながら「A!A!」と、声を掛け続けて居ました。
Mはまだ、祈って居ます。
私とKは黙って、交互にMとMのお母さんを見ていました。
暫くして、Aの意識が戻り机から顔を上げると「お母さん?どうしたの?」
母「あんた、今まで何してたか覚えてる?」
A「何って、寝てたんでしょ?」
母「やっぱり覚えて無いんだね?あんた、メロン食べてたのよ」
A「はぁ?私がメロンなんか食べる訳無いでしょ?匂いすら嫌なのに。って言うか、誰?こんな所にメロンの食べかけ置いたのは!どうせ、こんな汚ない食べ方するの、姉ちゃんでしょ!」
そのAの言葉に、ずっとお父さんの仏壇の前で祈っていたMが立ち上がってこっちへやって来ると「私じゃねーよ!それは本当にお前が食べてたんだよ。お前の中にYが入ってたらしい。今日はYの命日だった。忘れてたんだよ。本当にゴメン。今、親父にずっと祈ってた。明日必ずYの墓参り行くつもりだからAを助けてやってくれ。って」
A「…。私…本当にこのメロン食べたの?」
Aは私に聞いて来ました。
私「うん。ガツガツ食べてたよ…」
A「気持ち悪い…」
母「トイレ行って来な!M!明日必ずYのお墓参り行くんだよ!忘れたらタダじゃおかないよ!」
そう言いながらAが食べていたメロンのお皿を片付けました。
Aはトイレで全部メロンを出して来て、何度もうがいをしていました。
Aの中にYが入り込んで居る間、Aには全く記憶が無かった様でした。
A「全然何も覚えて無い。部活終わって、どうやって帰って来たのかすら覚えて無いんだよね。
Yちゃん、何で私に入ったのかな?寂しいなら姉ちゃんに入れば良いのに!」
母「Aが、Yが入り込んでる間記憶が無かった様にMに入っても、きっと記憶が無かったはず。なら、ずっと思い出して貰えないでしょ?だから一番近くに居るAに入って思い出させ様としたんじゃないかな?」
A「ふ~ん。私も明日、部活無いから一緒にお墓参り行こうかな」
母「そうだね。一緒に行っておいで」
翌日MはYの大好きだったメロンを持って、Aと二人でお墓参りに行きました。
帰って来てからMが私に「墓参り行ってYに謝って来た。そしたら、アイツの声が聞こえたんだ」
私「なんて?」
M「次、忘れたら連れてくよ」
私「こわっ!!」
長々とお付き合い頂きありがとうございました。
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