
長編
調理補助の仕事
くろ 2020年4月19日
chat_bubble 0
11,522 views
私が高時給に惹かれて行った仕事先での実体験の話です。
私がまだ成人したてで就職先も見つからず、バイトをあちこち転々としていた頃でした。
6月頃にたまたまネットで見つけた時給1500円に惹かれて、船上レストランの仕事。
当時、仕事を辞めた後でお金もあまりなくすぐさま会社に連絡しそのままあっさり採用。
2つの街を往来し知名度も高い上に、私自身も何度か利用したことのある船でした。
船自体も大型船で中で働くスタッフもそれなりに居ました。(それでも大体30~40名程度)
私の配属は元々レストランでしたが、あちこちでキッチンの仕事をこなしていたこともあり初日から時給+300円でどうか?との話を頂き快諾しました。
仕事自体は2ヶ月停泊以外は常に船に乗り続けながらレストランの食事と従業員のまかないを作る為の補助のみでした。
私の他にも某有名大学の学生さんや私と同じようなフリーターの方など数人同じくバイトで来ており、すぐに打ち解け仲良く仕事ができました。
ですが最初の頃、私は慣れていない船上での生活・仕事で毎日仕事が終わってお風呂を済ませるとすぐさまベットに吸い込まれるように寝ていました。
1週間が過ぎて仕事にも慣れてきたある日。
仕事で使ってる包丁が研がれておらず、私は毎日指に切傷が絶えなかったので夜自分で仕事が終わった後に包丁を研いでいました。
従業員食堂に人の気配を感じ振り返りましたがそこには誰もいません。
気のせいかな…と、その時はあまり気にも留めずに包丁を研いでいました。
仕事が終わるのが大体いつも20時頃で寝る時間は大体22時頃。
私はいつものようにお風呂に入り、部屋でくつろぎいつの間にか寝ていました。
ふと目が覚めて誰かが部屋に入ってくる気配がし、隣の部屋のバイト生かな?と「どうしたの〇〇?」と聞きましたが返事はありません。
私の部屋は二人部屋でしたが相部屋ではなく一人での利用です。
身を起こして入り口を見ましたが誰もいません。
が、カーテンは揺れています。
船上ではよくありますが、深夜帯勤務の見回りの社員の方かな…と私はまた寝てしまいました。
次の日、出勤して仕事をしている時に社員の方に昨日体験した話をしました。
「昨日の夜中に私の部屋に誰かが来ていたみたいで、隣の部屋の子かと思ったんですが違ったみたいでお化けですかね笑」
すると話を聞いた社員の方の顔が少し曇りました。
気になってしまった私はもしかして?と聞いてみると
「実はこの船で事故で亡くなった新入社員が居たんだけど…亡くなる前まで君の部屋使ってたんだよね」
あー聞くんじゃなかったと後悔しました。
ですが聞いてしまった以上は後に引けません。
その子は車両倉庫の中で車両案内をしてた際に誤って柱とトラックに挟まり即死してしまった。
想像の斜め上の話しすぎて私自身固まってしまい、社員さんから
「もしあれなら部屋変えて貰ったら?」
との話をされた後の休憩時間に上司に直談判し出来るなら部屋を変えてほしいと懇願しました。
結果は勿論今はまだ無理だから待ってほしいとの一言でした。
仕方なく隣の部屋の子にお願いして隣の部屋で寝たり、隣の部屋の子が私の部屋に来て一緒に寝たりしてくれました。
それからまた1週間が過ぎた頃、上司から客室の一室でよければとのお話を頂きすぐさま移動しました。
私自身これで一安心でした。
7月も終わりかけ、日中の気温は30度を越え港近くの町ではお祭りが催される時期でした。
停泊の日もたまにあり、船から降りて縁日を見て回ったり仲良くなった社員の方と食事に出掛けたりと日々充実していました。
その日はレストランの利用者がいつも以上に多く、仕込みしてある食材もどんどん無くなって次々食材を仕込んでは出しての繰り返しでした。
ピークが終わりいつもより早めに上げてもらえた為(19時頃)、部屋に帰った私は軽く寝てからシャワー浴びよう…と寝てしまいました。
一時間は経ったでしょうか…
ふと目を開けて寝返りを打とうとすると体が動きません。
これ…金縛りだ…近くに何かいる?…近づいてくる。
最初こそボソボソと何か呟いているだけなのですが、徐々に徐々にですがはっきり言葉が聞こえ遂に私の耳元で囁くのです
無限耳鼻舌身意…無色声香味触法…
そう。聞こえたのは男性の声での“お経”でした。
体が動かない上に、目も見開いたまま閉じられません。
感覚は30分以上ですが実際はもっと短いと思います。
その時ふと頭をよぎりました。
「もしお前が何か霊的な物、それに属するものに何かされた時は 私には何も出来ません と心で強く願いなさい。俺の血を引いてしまってるから子供達はそういったものを感じ取りやすいかもしれないから覚えておきなさい。」
私がまだ小さい時から耳が痛くなるほど父に言われていた言葉でした。
心の中で私には何も出来ません…貴方を助けられません…と何度も何度も唱えました。
その後すっと体が軽くなり金縛りは解けていました。
私は電気をつけて周りを見渡しましたが…当然誰もいません。
余りの怖さにすぐにバイトの子達の部屋に飛び込み、私は何も言えず泣いてしまいました。
彼らは慌てて私をなだめてくれ、落ち着いてから話を聞いてその日は皆で布団をくっ付けて一緒に寝てくれました。
一人寝相が悪く、夜中に蹴られたのも怖いよりはまし!と我慢していました笑
その後はぷつっと何事も無くなり、期間(2ヶ月半)の仕事を終え私は実家に帰りました。
以上が私が実体験した怖い話でした。
結局、何故私だけがその体験をしたのかもわかりませんし、私に何を訴えていたのかもわからないままです。
今現在私は霊的な物、体験をあまりしなくなりましたが、出掛けた時にここ…嫌だな。と感じる場所や長く居ない方が良さそうと感じる場所には自分の直感を信じて留まらないようにしています。
長々とご覧いただいた方ありがとうございました。
皆さんも高時給には裏があるかもしれませんので気を付けてくださいね。
後日談:
- ちなみに私の父親は何も居ない筈なのに説教をしていたり、唐突に家の中に塩を撒いたりする人で視ることも感じることもできたそうです。 母はそれを頭おかしくなったんかな?と眺めていたと聞いています笑 私自身はとある民族の血が濃く、そういったものに好かれやすいのだと父から教わりました。 現在父はその力?能力?は無くなったと言っていましたが、今でもたまに感じることはあるようです。 この体験は父にも相談しましたが、 お前なら聞こえるかもしれないとそれは来ていたのだろう。もし、耳元まで来ているときに振り向いていたらどうなっていたかもわからん。 と言われ、かなりゾッとしました。 振り向きたくも無いんですけどね。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(0件)
コメントはまだありません。