
廃墟の公園に、冬の冷たい風が吹き抜ける。人の気配はほとんどなく、草木は枯れ果て、ただ静寂が支配していた。そんな中、私は一人、ベンチに座っていた。
「どうしてこんなところにいるの?」
ふと声をかけられ、顔を上げると、そこには中年の女性が立っていた。彼女は薄いコートを羽織り、目を輝かせている。
「いや、ちょっと考え事していて…」
「そう、考え事ね。あなた、幸せになりたいと思わない?」
その問いに私は一瞬戸惑った。だが、心の奥では、もう幸せなんて感じられないと思っていた。
「幸せなんて、もう無理だよ。何もいいことなんてなかったし。」
女性は微笑みながら、ポケットから何かを取り出した。小さな光を放つ涙型の種だ。
「これを飲んでみなさい。きっと幸せになれるわ。」
「ふざけないでくれ、こんなものがどうして…」
「信じなさい。私が保証する。あなたの人生が変わるわ。」
半信半疑のまま、私はその種を受け取った。だが、心のどこかで、試してみたい気持ちもあった。
「本当に効果があるの?」
「もちろん。私もこれを飲んで、運命が変わったのよ。」
そう言いながら、彼女は自らの手でその種を口に運ぶ。
「ほら、私は幸せになった。あなたも試してみて。」
私はその言葉に促され、ゆっくりと種を口に含んだ。瞬間、頭の中がぐるぐると回り始め、まるで走馬灯のように私の人生が映し出された。
良い思い出も、悪い思い出も。
すると、心の奥から何かが湧き上がってくるような感覚がした。
「どう、感じる?」
「なんだか…少し、楽になった気がする。」
「それが幸せの感覚。あなたはもう一度、自分の価値を見つけることができる。」
彼女の言葉は、私の心に響いた。
「でも、どうすればいいの?自分には何の価値もないと思っていたから…」
「それは違う。あなたにはまだ可能性があるのよ。さあ、幸せを分け与えて。」
彼女は私に微笑みかけ、まるで道を示すかのように指を指した。
「まずは、目の前の人を見て。」
周囲を見渡すと、そこには小さな子供が母親に寄り添う姿があった。
「彼らに幸せを与えることが、あなたの新たな道になるのよ。」
その瞬間、私は何かを掴んだ気がした。
「ありがとう、あなたのおかげで…」
「急がないで、ゆっくりと歩きなさい。あなたの新しい物語が始まるの。」
女性は微笑んだまま、どこかへ消えていった。
その夜、私は新たな一歩を踏み出すことにした。公園を後にし、周りの人々に幸せを届けるために。
この世界には、まだまだ可能性があると信じて。
後日談:
後日談はまだありません。
この怖い話はどうでしたか?
chat_bubble コメント(0件)
コメントはまだありません。



