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長編

氷獄の都(ひょうごくのみやこ)

にー 3日前
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17時に氷獄の都から駅へと向かうバスが存在するようだった。安堵のため息を吐く。     5分、10分…とバスに揺られ、次のバス停まで異常に長いことに焦りを感じつつも、見慣れない景色を車窓から眺める。  ようやくバスは停車し、俺は運賃を支払う前に一応バスの運転手に尋ねた。 「このバスは駅まで行きますか?」 白髪が目立つ中年の男性運転手は、覇気のない目で答える。 「行きません。このバスは工業高校行きです」 「そうですか…わかりました」  もしかしたら別のルートで駅まで行くのかもしれない。そんな希望は打ち砕かれた。  俺は精算機に乗車賃を入れ、バスを降りる。俺の他に氷獄の都で降りる乗客はおらず、バスは行ってしまった。  このバス停から駅行きのバスが到着するまで後15分程度ある。俺はどこか暇つぶしできる場所はないかと辺りを見回した。だが、辺りは一面のすすき野原。その中にポツンと佇む一軒家くらいしかめぼしいものはなかった。一軒家というよりもただ屋根があるだけの建物と言った感じで、その屋根の下で数人の大人たちがまるでキャンプをするように薪に火を起こしながら鍋を作っていた。大人たちの顔は暗くてよく見えない。   「……ぱ。…けんぱ。けんけんぱ」  突如、すすきが生え揃ってなく通路のようになっていた場所からそんな声が聞こえてきた。声のした方向を見ると、何やら短髪の男の子が1人でけんけんぱをして遊んでいた。  まるで何十年かも前に来たかのような不思議な感覚。だが、俺は一刻も早くこの場から逃げ出したかった。なぜなら、先程鍋を作っていた大人たちが、不気味な微笑みを浮かべながらこちらにおいでおいでをしてきていたからだ。もちろん行く気なんてなかったが、けんけんぱをしていた男の子がこちらに近づいてくる。 「いこ」  俺と男の子の距離はわずか3メートルほど。空洞のような男の子の目がまるで俺を吸い込もうとしているかのようにとらえている。  俺は走り出した。どうしても逃げ出したかった。あまりに不気味だったのだ。  走る。走る。走る。  俺は振り向いた。  男の子が追ってきていた。あの大人たちと同じ、狂ったような笑みを浮かべながら。 「マッテ、マッテ、マッテ」  男の子はそれだけを繰り返す。まるで生まれて初めて走ったかのようにぎこちない走り方なのに、俺と同じペースでついてきながら。  やがてすすき野原を抜け、大きな一本

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