
長編
歩鬼
まなみ 3日前
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をじっと見ながら。
何だか不気味に思えてきた俺は、お婆さんを追い越すようにして足早にその場を立ち去った。
周りの景色を眺める余裕も無くなってきた。
先ほどから付き纏うこの違和感と、あの不気味なお婆さんの顔が頭から離れない。
が、その時だった。
「やーい鬼っ子、早く上ってこーい」
子供の声。
俺は顔を上げた。視界の先、着物姿の子供が手を振っているのが見える。
あの子供だ。
俺に悪戯をしてきたあの子供。
子供は手を振ると、また直ぐに上へと走り去って行く。
鬼っ子?何だ?何の話だ?
違和感との葛藤もあり、思わずうろたえていると、後ろから人の足跡が聞こえた。
不意に後ろを振り返る。
あのお婆さんだ。
目を見開き、驚愕した顔で俺を見て足を止めている。
どいつもこいつも、何なんだ一体……少しイラっときた俺は、立ち止まりこちらを凝視するお婆さんに思わず声を荒げた。
「な、何ですかさっきから、お、俺に何か」
そう言い掛けた時だった。
「あ、あんたその顔、もしかして遭難しとるんか……!?」
お婆さんが口を僅かに震わせながらそう言った。
すると突然、あらゆる光景が巻き戻される様に、俺の脳裏に先ほどの光景が浮かんだ。
お婆さんが背中に背負った籠の中身だ。
最初に見た時、かごの中身は野菜で一杯だった。
次に、立ち止まっていた俺の前を通り過ぎた時、お婆さんが背負っていた籠の中は、空っぽだった。
そして今、俺の目の前に居るお婆さんの背中には、籠自体が見当たらない。
俺は……俺は……?
自分の顔を震える手で触る。
ざらつく感触。
伸びきった髭。
腕時計が視界に入る。
金具部分が錆付いていて、全ての針が停止していた。
ポケットから携帯を取り出す、が、出発前フル充電されていた携帯は、既に電池切れしていた。
何が何だか分からない、混乱する頭に思考が追いつかない。
次の瞬間、
「うわぁぁぁぁぁっ!?」
俺は腹の底から叫び声を上げ、そのまま意識を失った。
どれくらいたっただろう、気がつくと、俺は病院のベッドに寝かされていた。
医者の話によると、俺は二週間も山を一人さ迷い歩いていたそうだ。
近くに住むお婆さんが、畑作業に出かける時、数日に渡って俺の姿を目撃したらしく、三回目にしてもしやと思い、俺に声を掛けたそうだ。
後から警察が来て、なぜ助けを呼ばなかったのか等、自殺を疑うような聴
後日談:
- ダラダラと怪談投稿させて頂いております。 洒落怖風には書いておりません。 脚色を交えて書いております。
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- ホントオマワリはなんの役にも立たない庶民の敵だね。事件解決も、できないんだからさハオ
- ループしてるのかと思ったら違った!助かってよかたぁ(°▽°)バターオイル
- 鬼「やーい鬼っ子!」 自己紹介で草真実を知る者
- お巡りは人間の屑、社会のダニ、焼却処分するのが吉匿名さん
- 山怖ですか?不思議で怖い。さき
- 文章に引き込まれた。おばあさんに感謝!匿名