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お題 長編
もういいかい?
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もういいかい?

17時間前
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私の小学校には、「夜の追いかけっこ」という噂があった。

放課後、誰もいない校舎で「もういいかい」と声が聞こえたら、絶対に返事をしてはいけない。

もし「まあだだよ」と答えたら、隠れる側になる。

もし「もういいよ」と答えたら、鬼になる。

そして、どちらを選んでも、朝まで校舎から出られない。

そんな噂だった。

私たちは最初、それをただの怪談として笑っていた。

けれど、六年生の秋。文化祭の準備で遅くまで残った日、その噂は本当になった。

教室で飾り付けをしていたのは、私と、幼なじみの拓也、同じ班の真帆の三人だった。先生は職員室にいて、終わったら声をかけに行くことになっていた。

外はすっかり暗くなっていて、窓ガラスには教室の蛍光灯が白く映っていた。廊下の奥は電気が消えかけていて、非常口の緑の光だけがぼんやり浮かんでいた。

そのとき、廊下の向こうから声がした。

「もういいかい」

子どもの声だった。

私たちは手を止めた。

「誰か残ってる?」

拓也が廊下を覗いた。

誰もいない。

真帆が小さく笑った。

「先生の声じゃないよね」

もう一度、声がした。

「もういいかい」

今度はさっきより近かった。

私は急に、噂を思い出した。

「返事しちゃだめ」

そう言ったのに、拓也はふざけて廊下に向かって言った。

「まあだだよ」

その瞬間、校舎の電気が一斉に消えた。

教室も、廊下も、全部。

真帆が悲鳴をあげた。

数秒後、非常灯だけが点いた。薄緑の光の中で、拓也の顔が真っ青になっていた。

廊下から、ぱたぱた、と裸足の足音が聞こえた。

小さな足音だった。

ぱたぱた。ぱたぱた。

でも、妙に速い。

「隠れて」

どこからか声がした。

さっきの子どもの声ではなかった。もっと低く、掠れた声だった。

「十、数えるから」

廊下の奥で、誰かが笑った。

「いーち」

私たちは反射的に動いた。

真帆は掃除用具入れに隠れ、拓也は教卓の下に潜った。私はカーテンの裏に隠れた。心臓の音がうるさくて、息をするのも怖かった。

「にーい」

声は廊下ではなく、教室の中から聞こえた。

「さーん」

誰かが、机の間を歩いている。

ぎし。ぎし。

でも足音は、床ではなく、天井から聞こえていた。

「よーん」

カーテンの隙間から、教室が少し見えた。

黒板の前に、小さな子どもが立っていた。

赤いランドセルを背負った、低学年くらいの男の子だった。顔は俯いていて見えない。裸足の足は泥だらけで、床に黒い足跡を残していた。

「ごー」

男の子が、ゆっくり顔を上げた。

目がなかった。

目のある場所が、黒くぽっかり空いていた。

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はじめまして、よろしくお願いします。

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