
長編
あの夏からずっと
匿名 3日前
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に違和感を感じた母が「何言うてんの?」と聞き返すと、「ハハハ」と笑って部屋に戻っていったそうです。
2時と言えば、私があの笑い袋と対峙していた時刻。
母は
「笑い袋は先週ゴミに出したから鳴るはずない、それは夢」
と鼻で笑いましたが、それでは朝方に箱の周りに散乱したおもちゃを片したのは何だったというのでしょうか。
その後、妹に聞いても昨夜は一度も起きてないと言いますし、あれだけ叩かれていた足にはアザの一つもありません。
私の足には、あの時の妹の手形がはっきり残っているのに。
この日を境に不思議な出来事に遭遇する機会が増えました。
(私一人しかいない深夜の学校で黒電話の音が鳴り響いたり、夢を操れる期間が訪れたり、様々なことを経験しましたがそれは後々)
妹の一件は毎年夏の寝苦しい時にだけ思い出すのですが、つい先週、クソ寒い時節に思い出したのです。
大学院に通う私は修論に追われていたため、終電で帰ることが出来れば御の字でした。
私自身目が大変悪いのもありますが、山奥にある田舎の学校ですから大学内を歩くときでも懐中電灯などの灯りは必須です。
22時頃に正門へ続く広い道路を歩いている時のことでした。
スマホのライトを出力最大で照らしながら歩いていると、十字路に差し掛かった時に左側面から自転車がぶつかってきたのです。
派手に転倒した私に「大丈夫ですか!」と自転車の主が声をかけ、隣で何度も謝っていました。
立ち上がった感触から「これはダメな捻り方したな」とも思いましたが、相手のとても申し訳なさそうな態度とどうしても終電で帰りたい気持ちが勝ってしまい、私は警察を呼びませんでした。
ただ、大学規模ともなれば顔も見たことない学生がほとんどなのですが、この時ばかりは初対面のコイツに言い表しようのない違和感を抱いたのです。
そして「もういいから」とヨロヨロ立ち上がり、頭を下げたそいつが再び自転車に跨ってペダルを漕ぎ始めた時、確かに聞こえました。
「次は右足〜」と。
先ほど謝罪を繰り返していた声とは全く異なる、大学院には似合わない子どもの声で。
あの違和感は、正体の掴めなさにあったんだと気が付きました。
見た目からも声からも性別の区別がつかない、直前まで自転車の音すら無い、しかもさっき見たはずのその顔をもう思い出せなかったのです。
呼び止めるほどの勇気もなく、帰宅困難なレベルに痛い足を引き摺りながら結局その夜は学校に泊まりました。
翌朝に
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