
ある日、病院で女の子が生まれた。
両親は娘の誕生をとても喜んでいたが、本当の意味での家族の幸せな時間は、女の子が生まれたばかりのほんの数時間だけだった。
その夜、事件が起こった。
同じ病院で出産を迎え、前からその母親に怨みを持っていた女が夫や看護師と共謀し、生まれたばかりの自分の娘とその女の子を交換してしまった。
生まれた時期や着せている服などほぼ同じで、誰もそのことに気づかなかった。
娘を交換されて知らずに育てた家庭では、血の繋がりもない娘が両親の愛情をたっぷり受けて幸せに育っていた。
その女の子は両親に似てないものの、可愛らしい顔立ちで評判の娘だった。女の子は可愛いだけでなく勉強もスポーツもできて何でも器用にこなす素敵な女の子に成長していった。
高校生くらいになる頃には、男女問わず誰からも人気があり何をやらせても完璧な少女になっていた。
それでも誰も気づいていなかった。
両親も、兄も、さらにその女の子自身も・・自分は両親の実の子ではないと。
・・
一方でその家族の実の娘である女の子は、交換をした家の娘として遠く離れた土地で暮らしていた。
実の娘でないことは両親が固く口を閉ざし、誰にも知られることはなかった。
赤子を交換した女は娘を交換することだけが目的であり、実の娘を幸せにする訳でも、恨んでいる女の娘に復讐することが目的でもない。
女の子は虐待を受ける訳でもなく、その後生まれた両親の実の子である弟ともにごく普通の毎日を暮らしていた。
・・
こんなふうに誰にも知られずに家族とともに毎日を過ごしている人。
DNA鑑定でもしない限り、知られることはない赤の他人の子。
世の中には少なからず存在するのではないだろうか。
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