
さっき、4月の「グラウンドの12人目の影」を書き込んだ大学1年の俺だ。高2になって2ヶ月目、5月のゴールデンウィークが明けた頃の話をさせてほしい。
新しいクラスにも慣れ、学校生活が日常を取り戻しつつあった5月中旬のある日の放課後だった。俺は担任に頼まれたプリントを職員室に届けた帰り、新校舎の3階から静まり返った階段を下りていた。
部活に向かう途中の、なんてことのない普通の放課後のはずだったんだ。
今回は、すれ違うたびに人数が増殖し、俺の存在そのものを消し去ろうとした、高2の5月の怪談をここに詳しく吐き出させてほしい。
3階から2階へと続く階段を下りている時だった。
カン、カン、と下の方から、こちらへ上がってくる足音が聞こえた。
最初の踊り場ですれ違ったのは、一人の女子生徒だった。だが、ふと違和感を覚えた。
うちの学校の制服に酷似しているが、ボタンの色や襟のラインが微妙に違う、見慣れない制服を着ている。
すれ違いざまに胸元の名札が目に入った。【2年13組】と書かれていた。うちの学年は8組までしかない。
存在しないクラスだ。
おかしい、そう思った瞬間、心臓が嫌な跳ね方をした。
2階から1階への階段を下り始めると、また下から足音が聞こえる。今度は男子生徒が二人、並んで上がってきた。
二人とも同じ「13組」の名札をつけている。
顔は無表情で、目が完全に凝固して濁っていた。
嫌な予感がして、俺はペースを早めて階段を駆け下りた。
だが、次の踊り場を曲がった瞬間、目の前の光景に息が止まった。
下から、今度は四人の生徒が隙間なく並んで上がってくる。
その次は、八人。
階段を下りるたびに、すれ違う「13組の生徒」の数が、一段ごとに倍以上に不自然に増殖していくんだ。
誰も喋らない。ただ、衣類が擦れる不気味な音と、すれ違う瞬間に放たれる、冷蔵庫の奥のような猛烈な死臭だけが階段の空間に満ちていく。
高1の経験から、俺の脳裏に最悪のルールが突き刺さった。
階段の下からは、もう何十人もの「13組の生徒たち」が、すれ違う俺のことなど目に入っていないかのように、すし詰め状態で淡々と上がってくる。
階段の横幅は完全に奴らで埋め尽くされていた。
ルールはただ一つ。
すれ違う際、【奴らと、肌はもちろん、着ている制服やバッグすらも絶対に擦れ合わせてはいけない】。
後日談:
- 俺は激しく咳き込みながら、部活へ行くのも忘れてそのまま家に逃げ帰った。 翌日、恐る恐る学校の1階にある全クラスの靴箱を確認したが、やはり「13組」なんてクラスはどこにも存在しなかった。 あの学校の数え切れない怪談の中でも、【噂すら誰も聞いたことがない、存在しないクラスの死者たちが通り過ぎる未知の呪い】だった。 だけど、あれは絶対にただの白昼夢なんかじゃない。 なぜなら、あの怪談があってから大学1年になった今でも、俺は【駅や大学の狭い階段で、向こうから歩いてくる集団とすれ違う瞬間、異常な恐怖で動悸が激しくなり、完全に息を止めて壁際に張り付かないと足がすくんで動けなくなる】んだ。 特に5月になると、あの日すれ違った奴らの名札の「13組」という文字と、あの鼻を突く強烈な死臭がフラッシュバックして、冷や汗が止まらなくなる。 高2になっても、あの学校の怪談は、俺の日常の通り道を一瞬で死の空間へと変えた。 次は、6月だ。
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