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長編

ウルドゥー語に呪いを込めて

しもやん 2025年6月22日
怖い 60
怖くない 15
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ろ」  わたしは思わず「えっ」と驚きの声を上げてしまった。回収困難な不良債権の場合、高くても10パーセント前後が相場である。 「安いでっか? 兄さんも商売人やなあ、かなわんわ。ほな17.5パーセント! もうこれ以上はびた一文無理でっせ」  最初に提示された15パーセントで十分だったのだが、売り手側が安値で構わないと言い張るのもおかしい。あたふたしているうちに、念を押された。 「17.5で決まりでよろしいね?」 「そんな高額で買い取ってもらって、えらいすいません。あの、契約料金が口頭ではなんですから、メールで買い取り利率を送ってもらえますかね」  電話越しですら、桑原さんの雰囲気がガラリと変わったのがわかった。 「わしが契約を履行せえへんかもしれん。アンタ、そう言わはりますのか」  なんと返答してよいのかわからずにいると、さらに畳みかけられた。 「よろしいか、わしが17.5パーセントで買うたる言うたら絶対に誤魔化しはないねん」  総務部長からいくらで処理しろとは言われていない。適当に二つ返事で了承した。  もうこれ以上、渋沢興業とも桑原さんとも関わり合いになりたくなかった。  請求書の束を送った翌日、きっちり17.5パーセント分の入金があった。入金先会社名が渋沢興業ではなく、聞いたこともない企業だったのは気になったが、総務部長はよくやったとご満悦だった。  彼がいいならわたしも本件を蒸し返すつもりはない。債権がいくらで売れようが、どのみち給料が増えるわけでもない。  こうしてアブドゥール・アビドさんの債権処理は終わった。  そう思っていた。      *     *     *  数か月後、繁忙期で連日残業が続いていた時節だったと記憶している。  深夜22時ごろ、静まり返ったオフィスに電話の音が鳴り響いた。この日はたまりにたまった中古車輸出案件を抱えてパンク寸前で、わたし1人だけが残って書類作成に追われていた。  出るかどうか迷った。この時間帯にかかってくる電話だ、朗報であるはずがない。未通関コンテナがあるだの、危険品明細書類が未提出で船積みができないだのといったトラブルに決まっている。それも他人案件の。  とはいえタイムカードの退勤時間と電話の受信時間を比べれば、早晩居留守はバレてしまう。電話に出ないことでコンテナが不積みにでもなれば責任問題になる。渋々受話器をとった。 「はい、**海運です」 「夜分

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  • 久々の新作は人怖モノで新鮮でした。次回作にも期待します。
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