本当にあった怖い話

怖い話の投稿サイト。自由に投稿やコメントができます。

長編

ウルドゥー語に呪いを込めて

しもやん 3日前
怖い 60
怖くない 15
chat_bubble 1
8,016 views
湿度0パーセントまで持っていく。それが彼らのやり方であり、その結果債務者が絶望の果てに自殺することはある。だが殺してしまっては元も子もないはずだ。  高額の生命保険を債務者にかけ、事故に見せかけて殺害し、保険料を受け取ることで債権回収にあてるのは非現実的である。  どれだけ巧妙に事故を装おうとも、赤の他人が受取人になっていれば保険会社は疑義を抱く。徹底した調査がなされる。不審な点があれば警察に通報される。ひとたび警察組織が動けば、杜撰な殺しなどたちどころに露見してしまうだろう。  反社が堅気を殺した場合の量刑は、同じ殺人罪でも段違いに重い。10年以上食らいこむのは覚悟せねばならない。  モハメドさんの債務は三百万円もなかった。たったこれぽっちのために殺人を犯すのはリスクが高すぎる。そう思っていた。  しかし、こんな考察は所詮堅気の考え方にすぎない。  モハメドさんの(だと思われる)遺体が発見されたというニュースを見てから、さんざんこのことについて考え抜いた。  もし自分が債権を買った反社なら、どうやって17.5パーセント以上の利益を上げるだろうかと。  親兄弟を保険金の受取人にしておき、彼らが死亡給付を受けたその日から追い込みをかける。  他の消費者金融から借金させて返済に当たらせる。  死亡保険の自殺免責条項をかわすため、事故にみせかけた自殺を強要する。  素人のわたしが考えついただけでもこれだけある。犯罪のプロである反社なら、1ダースは手段を用意できるだろう。    十中八九、モハメドさんは殺されている。  死の間際、わたしに抱いた恨みの深さはいかほどだったろうか。  総務部長へは一部始終を報告した。彼は煙草をふかしながら、「さよか」とつぶやいただけだった。      *     *     *  つい先日、ニュースになった海岸へ出向き、花束を供えてきた。  直接手を下したわけではないが、責任の一端はわたしにもある。  無神論者であるわたしにとって、この行為は供養ではない。ただの自己満足にすぎない。  それでもやらずにはいられなかった。  モハメドさん、どうか恨まないでください。  図々しく感じるだろうが、読者も彼のために祈ってやってほしい。  少しでも、彼の怨嗟が晴れることを願って。

この怖い話はどうでしたか?

f X LINE

chat_bubble コメント(1件)

  • 久々の新作は人怖モノで新鮮でした。次回作にも期待します。
    防空頭巾
0/500

お客様の端末情報

IP:::ffff:172.30.2.48

端末:Mozilla/5.0 AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko; compatible; ClaudeBot/1.0; +claudebot@anthropic.com)

※ 不適切な投稿の抑止・対応のために記録される場合があります。

grid_3x3 話題のキーワード

search

サクッと読める短編の怖い話 サクッと読める短編の怖い話

読み込み中...