
さっき、10月の「図書室の貸出カード」を書き込んだ、大学1年の俺だ。
あの学校の土地は、秋が終わり、凍えるような冬が近づく11月になると、今度は学校行事の裏に隠された、さらに陰湿な罠で俺の精神を破壊しにきた。
10月の怪談のあと、自分の名前を書くたびに指先がカサカサに乾燥する後遺症に悩まされながらも、11月下旬を迎えた。
この時期になると夕方16時半には外は完全に真っ暗になり、誰もいない新校舎の廊下は、暖房も入らず氷のように冷え切っていた。
今回は、放課後の誰もいない視聴覚室で、映像の向こうの「自分自身」に存在を上書きされかけた7回目の怪談をここに吐き出させてほしい。
11月下旬のある日の放課後だった。
部活の練習が終わったあと、俺は担任の先生から「視聴覚室から借りた教材用のDVDとポータブル機材を、鍵を閉める前に戻しておいてくれ」と頼まれた。
預かった鍵を開け、新校舎の最上階の奥にある視聴覚室へと一人で向かった。
視聴覚室のドアを開けると、中は遮光カーテンが完全に閉め切られていて、昼間の授業の残り香のような重苦しい空気と、冬の容赦のない冷気が溜まっていた。
壁のスイッチを押し、前方の教卓の横にある機材棚にDVDを戻していた、その時だった。
ブツン……ッ。
誰も触れていないはずの、部屋の最前部にある巨大なプロジェクターのスクリーンが、突然不自然な電子音を立てて起動した。
レンズから放たれた強い青白い光が、暗闇の室内に放射され、思わず俺は目を細めた。
ザーッ……という激しい砂嵐のノイズのあと、大画面に映し出されたのは、どこかのクラスの楽しそうな学校行事の映像だった。
修学旅行か何かだろうか。
バスの中や観光地で、ピースサインをしながらカメラに向かって笑う大勢の生徒たちの姿。
だが、どこかおかしい。全員がうちの学校の制服を着ているのに、その「顔」が、まるで水に濡らした絵の具のようにぐにゃぐにゃに歪んで潰れているんだ。
不気味さに息を呑み、急いで部屋を出ようとした瞬間、カメラの映像がググッと不自然にズームアウトした。
画面の端、楽しそうに騒ぐ顔の潰れた生徒たちの背後。薄暗いホテルの廊下の奥に、ポツンと一人だけ、真っ直ぐこちらを向いて佇んでいる奴がいた。
心臓が頭に飛び出るかと思うほど激しく跳ねた。
そこに映っていたのは、他でもない、今現在の服装と全く同じ【俺自身】だった。
後日談:
- 俺は機材をその場に残したまま、狂ったように走って学校から逃げ帰った。 翌日、恐る恐る視聴覚室を確認しに行ったが、ブレーカーは元に戻っており、プロジェクターも何事もなかったかのように静かに佇んでいた。 後日、あの教材用DVDの履歴や、学校の過去の行事ビデオを調べてみたが、昨日映し出されたような「生徒たちの顔が潰れた映像」なんてどこにも存在しなかった。 【噂すら誰も聞いたことがない、俺だけをピンポイントで消し去ろうとする未知の呪い】だった。 だけど、あれは絶対に幻覚なんかじゃない。 なぜなら、あの怪談があってから大学1年になった今でも、俺は【集合写真や動画の中に自分が写っているのを見ると、自分の顔だけがほんの一瞬、あの時の映像のように真っ白に色褪せてぐにゃりと歪んで見える】んだ。 特に冬が近づく11月になると、スマホのカメラレンズを見るだけで、あの視聴覚室のスクリーンの暗闇と、自分自身に睨みつけられたあの陰湿な恐怖が蘇って、吐き気が止まらなくなる。 あの時、俺の存在の半分は、確実にあの呪われた映像の中に引きずり込まれたままなんだと思う。 これが、11月。 冬直前の視聴覚室で、俺が体験した7回目の怪談だ。 あの学校の土地は、いよいよ1年が終わる極寒の12月になると、今度は全校生徒が下校したあとの、あの誰もいない「真冬の終業式」の校舎で、過去最大の物理的な恐怖「怪談」が待っていた。 次は12月だ。
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