私の会社の話でもうひとつ不思議なことがある。 私は毎朝いちばんに出社する。 真っ暗なエレベーターホールの明かりをつけ、事務所の鍵を開け、事務所の明かりをつけ、自席に着く。 エレベーターホールと事務所とは擦りガラス入りのドアで仕切られていて、私の席の対面にそのドアが並んでいる。 エレベーターホールには、二基のエレベーターと、その隣に小さい給湯室、その隣に女子トイレと男子トイレが並んでいる。 たまに掃除のおばちゃんがトイレ掃除をしに来ることもあり、そういう時はトイレの明かりがついているのが、すりガラス越しにぼんやり見える。 そんな位置関係。 その日も私は薄暗い中出社し、エレベーターホールと事務所の電気をつけ、自席に着いてＰＣが起ち上がるのを待っていた。 そのとき、女子トイレのほうで物音がしたのでそちらに目を向けると、ぼんやりと女子トイレの明かりがついているのが見えた。 （あれ？さっき掃除のおばちゃんいたっけな？） 一瞬怪訝に思ったけれど、特に気にせずにまたＰＣに視線を戻した。 すると、エレベーターホールをトイレからエレベーターの方に向かって横切っていく人影がすりガラス越しに見えた。 当然それは掃除のおばちゃんの影だろうなと思っていた。 ・・が、どう見てもその影は異様だった。 まず足音がしない。 本当に影が左から右にすーっと滑るようにして移動していた。 そして何より、 でかい。 身長でいうと２メートルはあるほどの大きさだったのだ。 途端に鳥肌が立った。 その影はすーっとすりガラス越しに横切ってそのまま消えてしまった。 何年か前に、霊能者に会社を診断してもらったことがある。 その方が言うには、うちの会社は近くの神社の霊道に当たる場所にあり、 しかもトイレに浮遊霊が異常なほど多くいるということだった。 一応、お札的なものをいただいてはいたのだが・・ やはりそのことを思い出さずにはいれない、そんな不思議な出来事だった。