
新入社員の僕は、あの高層ビルのオフィスに配属された時、理想の上司に出会った。彼は常に穏やかな微笑みを浮かべ、質問には的確に答えてくれる。部下の士気を高めるための冗談を交えながら、業務を引き締める姿は、まさに理想的だった。
ただ、彼の冷静さには少し不気味なものがあった。特に、クライアントからの叱責を受けても、まったく動じない様子には疑問を感じていた。ある日、特に無礼なクライアントが暴言を吐き、彼の胸ぐらを掴む場面に遭遇した。クライアントは、「お前みたいな奴は二度と俺の顔を見れないようにしてやる!」と激怒したが、上司はただ微笑んでこう言った。
「では、僕もあなたが僕の顔を見れないようにしますね。」その言葉に、クライアントは呆れ果て、怒りのあまり帰っていった。
数日後、クライアントが行方不明になったとのニュースが流れた。僕はそのことを上司に伝えると、彼は満足そうに笑いながら言った。
「僕の言っていることが本当になってしまったね。」さらに、彼はぼそっと呟く。「だから言ったのに。」
その瞬間、僕の背筋に寒気が走った。彼はいつもと同じく優しい上司だったが、どこか別の世界にいるような、冷酷さを感じさせる笑顔が、頭から離れなかった。彼の優しさの裏に隠された恐ろしい一面を、僕はまだ知らなかった。今でも、その高層ビルのオフィスで、彼の微笑みは変わらず僕を見つめている。どこか不気味な気配を感じながら。
僕は、この上司のもとで働くことが本当に幸せなのか、次第に疑念を抱くようになった。彼の優しさは、もしかしたら、恐ろしい真実を隠すための仮面なのかもしれない。だが、それを知るのは、まだ先のことだった。
彼の優しい微笑みの背後に潜むものを、僕はこれからも見つめ続けることになる。
そして、次は誰が消えるのだろうか。
僕の心の中に、恐怖が静かに芽生え始めていた。
理想の上司の笑顔は、決して忘れられない。
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