
私は今、70歳を超えた彫刻家だ。実在しない生物を彫る日々を50年以上続けている。私の心の支えは、そんな美しい存在に出会うことだ。しかし、最近は訪れる場所が減り、限界を感じていた。
ある日、ネットを探していると、12年前に作られた古い掲示板を見つけた。そこには、私の住む町からほんの30分ほどの距離にある、地図にも載っていない海辺の集落の話があった。その集落では、特別な生物を見せてくれると書かれていた。
その集落には行ってみる価値があると思い、次の日の準備を整えた。質素な夕食を済ませ、期待を胸に眠りについた。
翌朝、私は急いで用意したものを持ち、集落へ向かった。冬の海風が冷たく、時折息切れしながらも無事にたどり着くと、そこで待っていたのは若い村人たちだった。彼らは心温まるもてなしをしてくれ、私の心は安らいだ。
村人たちは、私が見たがっている生物について語り始めた。それは白い貝殻を持ち、神話に出てくるような存在だと。話を聞くうちに、明日その生物に会えることが待ち遠しくなり、興奮して眠れなかった。
翌日、村人に案内されて生物がいるという場所へ向かった。地面は不安定で、傾斜が激しい。恐怖を感じながら進むと、ついにその生物が姿を現した。驚愕に腰が抜けてしまった。
目の前に現れたのは、白い肌に四本の腕を持ち、恐ろしい笑みを浮かべる化け物だった。逃げようとした瞬間、村人たちが私を取り囲んだ。彼らは最初から私を生け贄にするつもりだったのだ。私が気づいたのは、食事に何かを仕込まれていたからだと。
「悪いが、こいつは生きた人間しか食わない。」村人が冷たい声で言い放った。その言葉が耳に残る。私は必死に逃げようとしたが、急な傾斜に滑り込み、腹に木がぶつかり気絶してしまった。
気がつくと、村人たちはもう私を追いかけてこなかった。何とか帰路につくことができたが、この経験は私に一つの教訓を与えた。文化の発展は、恐ろしいものすらも受け入れてしまう力を持っているのだ。
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