
冬の夜、会社の駐車場で俺は一人、車の中で頭を抱えていた。外は冷たい風が吹き荒れ、雪がちらついている。今日もまた、上司の厳しい叱責を受けてしまった。もう本当に疲れた。どうせ帰るのも面倒だし、少しこのまま眠ろうと、運転席のリクライニングを倒した。
だが、心地よい夢の中に入る暇もなく、突然、窓を叩く音がした。目を擦り、驚いて窓を見ると、そこには前髪の少ない若い男が立っている。彼は薄ら笑いを浮かべ、傘もささずに雪に濡れながらこちらを見つめていた。その姿は異様で、思わず窓を少し開けた。
「田口さん、再会できましたね!」彼は興奮した様子で話しかけてきた。俺は思わず戸惑い、誰だか分からなかったが、彼は勝手に助手席に座り込んだ。「あの時の話、ずっと考えていたんです。あなたの言ってたこと、実行に移しましたよ!」
彼の言葉に耳を傾けると、どうやら俺が雑談で話したことを真に受けたらしい。「この世には必要ない人がいます。あなたの上司の田口さんがいなくなったら、世界はもっと良くなるって、そう思いませんか?」彼は目を輝かせていた。俺の心臓は一気に早鐘のように打ち始めた。何を言っているのか、全く理解できなかった。
「それで、実行しました。ほら、これを見てください」と言いながら、彼はリュックを膝に乗せて、ファスナーを開けた。その瞬間、何とも言えない血の匂いが鼻を突き、俺は恐怖で体が硬直した。覗き込むと、その中には黒い髪が見え隠れしていた。
「うわっ!」俺は悲鳴を上げ、思わず後ろに倒れ込んだ。彼は余裕の表情でリュックから頭部を引き出すと、満面の笑みを浮かべて見せた。それは確かに人の頭だった。目を閉じたまま、口からは血が滴り落ちている。俺は恐怖にかられ、目を背けようとしたが、彼の声が耳に残った。
「田口さんが言った通り、こうすることで世界は浄化されるんです。あなたが望んでいたことを、僕は実行しました。」彼は嬉しそうに言った。その瞬間、俺の心が凍りついた。自分が言った言葉が、こんな形で実行されるなんて思いもしなかった。
「お願いだから、やめてくれ!」俺は声を上げたが、彼は無邪気な顔で頭部をリュックに戻し、ファスナーを閉じた。
「行ってきます、もっと良い世界を作るために!」彼は笑顔で駐車場を後にしていった。雪は降り続き、俺はその場に立ち尽くし、呆然と彼の背中を見送るしかなかった。彼の言葉が頭の中でぐるぐると回り続けている。果たして俺は、何を招いてしまったのか。
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