
「もしもし、先輩!聞いてください、先週の仕事の帰りに、超不思議なことがあったんです!」
同僚の声は興奮で弾んでいる。冬の寒い夜、彼のアパートでの電話が始まりだった。
「おう、どうしたんだ?」
「実は、あるプロジェクトの打ち合わせが終わって、帰り道でのことなんです。いつも通りに電車で帰ろうとしたら、なんと、駅に着くと同時に目の前にバスが止まって!」
「それは運がいいな。どこ行きのバスだ?」
「それが、行き先はわからないんです。普段見かけないバスで…ただ、乗客が全員座っていて、妙な雰囲気でした。」
同僚は続ける。バスに乗ると、運転手は無言で、車内は異様な静けさに包まれていた。周囲を見渡すと、見知らぬ人々が彼をじっと見つめ、心の中に不安が広がっていく。
「途中、運転手が急に振り返って、私にこう言ったんです。『次の停留所で降りて、まっすぐに進んで!他の道には行かないで!』って。」
「それは怖いな。結局、どうなったんだ?」
「降りた先は、真っ暗な道でした。街灯も無く、ただのあぜ道。全然知らない場所で、周りは静まり返ってました。」
同僚は、道に迷うことを恐れ、言われた通りに進むことにした。やがて、目の前には古びた寺が現れ、そこで待っていた僧侶が彼を迎え入れてくれた。
「お疲れ様です。あなたを送り届けるためにタクシーを呼びます。」その言葉に少しほっとした彼。
「でも、帰ってから地図を見たら、降りたバス停がどこにも無いんです。道も寺も、全然違う場所にあるのに…」
「それは奇妙だな。バス停はどこにあった?」
「分からないんです。ただ、あのバスと運転手が怖くて…」
電話を切った同僚は、少し気がかりになり、次の日、寺に電話をかけてみた。
「はい、確かにその夜に女性が来て、タクシーを呼んだことがあります。」
驚いたことに、同僚が体験したことは本当だった。彼はその話を同僚に伝え、感謝の意を示そうと寺を訪れることにした。
「その節はお世話になりました。」と僧侶に言うと、僧侶は静かに頷いた。
「実は、あなたのような方が二人目なんです。以前にも同じような電話がかかってきたことがあります。」
「そんなことが…」
「恐らく、そのバスは、あの世に向かう人々を乗せていたのでしょう。あなたが乗ったことで、彼らは驚き、現世に戻すために急いで送り届けてくれたのだと思います。」
同僚はその言葉を聞き、言葉を失った。もしも運転手の言うことを無視していたら、どんなことになっていたのだろうか。
後日談:
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