
父方のおじぃが怖かった
盆と正月にしか会わない程度だが会うたびに怖かった
何故なら常に酔っている状態だからだ
何か仕事をしているわけでもなく、会うたびに酔っているので話をした記憶もない。昭和一桁世代なのでそもそも子供と接するような人ではないのだろう
おばぁとは良く会話していたがおじぃはただただ酒を飲むだけで口を開くことはない
感情をどこかに置き忘れてきたのか笑いもしないし、怒りもしない。全くの無表情。能面を付けて酒を飲むからくり人形とさえ思っていた。
父方の実家は海のすぐそばにあり、徒歩一分で堤防だ。ある盆のこと。従妹たちと一緒に堤防で釣りをしていて、気が付いたら後ろに煙草を吸いながらおじぃが立っていた。
自分はその時、従妹たちとは離れて一人で釣りをしていたので急におじぃが現れたことに死ぬほどびっくりした
後ろからの風の匂いから既に相当酔っているのが鼻腔の奥で感じ取れる。声を掛けてくることもなくただただ後ろにいる気配だけはある。
ほとんど話したことがないので喋りかけることも振り向くこともできない。もしかした孫かどうかも認識していないのかもしれない。
10分くらいか。どれくらいの時間経ったのか定かではないが急に釣り針が勢いよく下がり魚が掛かった。
釣りも慣れてなくまだ小学生だった自分は軽いパニックに陥り従妹たちの名前を叫んだのだが運悪くだいぶ遠くにいるため聞こえていない。
悪戦苦闘していると後ろにいたおじぃが代わりに竿をもち、ゆっくりとだが確実に釣り上げてくれた。
今思えばそんなに大きいサイズではなかったと思うが助けてもら、ったお礼と喜びをおじぃに伝えると何も言わずに頭に手を軽く触れて家に帰っていった。
その後からはさほど怖さを感じなくなったが思春期にも突入する頃だったのでやっぱり話することはなかった。
それから約10年後におじぃは天国に旅立っていったが後にも先にもおじぃとの思い出はこれしかない。
大酒飲みでタバコ吸い。仕事もしていたのか分からないおじぃだったがもう少し話しておけばよかったなと釣りをしている時にふと思ったりもする。
後日談:
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