
あれは私が小さかった頃の出来事です。
古びた診療所の近くを通りかかった時、弟は奇妙なジャム瓶を見つけました。その瓶は、何かが入っているように見えましたが、蓋が固く閉じていて、開けることができませんでした。興味を惹かれた私は、その瓶を持ち帰ることにしました。
その夜、私と弟は自分たちの部屋でその瓶をテーブルに置き、どうやって開けるか話し合っていました。しかし、何度試みても蓋は開きません。弟はその瓶を見つめながら、"中身が何か気になるな"と言いました。
その晩、私たちは一緒に布団に入って眠りました。だが、夜中に奇妙な音で目を覚ますと、瓶が勝手に揺れていました。薄明かりの中、私はその瓶を見つめました。すると、瓶の中から何かがこぼれ出してきました。それは、まるで生き物のように動き出し、弟に向かって這い寄っていくのです。
私は恐怖に駆られ、叫び声を上げて弟を起こしました。弟が目を覚ますと、瓶の中から出たものは、いつの間にか彼の手を掴んでいました。私は必死になって瓶を叩き、彼を助けようとしましたが、瓶はもうひっくり返り、内容物が部屋中に広がっていくのでした。
やがて、私たちの騒ぎを聞いて親が駆けつけてきました。彼らが部屋の電気を点けると、信じられない光景が広がっていました。弟は床に倒れ込み、周囲は赤い液体で染まっていたのです。私は何もしていないのに、弟を殺した犯人にされてしまいました。
誰も私の言うことを信じてくれません。瓶はどこにも存在していないと言うのです。
あれから十年、私はこの診療所に隔離され、外の世界へ出ることは許されていません。どうして誰も私を信じてくれないのか。あの瓶は、今も私の心の中で息づいているのに。そう、彼は今も私とともにいるのだから。ジャム瓶の囁きが、私を呼んでいるのです。彼は私の側に、いつも一緒にいるのです。私を見捨てず、私を見守っているのです。夜が訪れるたびに、彼の声が聞こえてくるのです。
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