
長編
【実体験】男の子と夢
匿名 3日前
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ます。
もちろんトンネルに明かりなどはなく、数十メートル先の出口から見える月明かりだけを頼りに歩いていました。
(お腹……空いた)
ただ漠然とそう思いました。
私と言うより、彼がそう感じていました。
どうやら、私は彼の見たもの、感じたものをそのまま共感しているようでした。
彼は住んでいた所が空襲に襲われ、唯一の家族であった母親を亡くしていました。住んでいた地域のよく知らない生き残った人々と共に、トンネルを歩いていました。
彼は数日川の水以外口にしておらず、持っているものはお母さんが縫って作ってくれた、名前入りの何も入っていない赤い肩掛けカバンと、着ている服に靴だけです。
彼はまだ幼く、何をしたらいいのか、ここが何処なのか、どこに向かっているのかもよく分かって居ませんでした。
ただひたすらに空腹に耐えながらも、母親から貰った大事なカバンを無くさないように紐を握って歩いていました。
トンネルは幅50メートル程度、長さは200メートル位だと思いますが、男の子の周りにはたくさんの人が囲んでおり、正確な大きさや道の先は見えていませんでした。もっと小さかったのかも知れません。
そうして多分トンネルの真ん中を超えた辺りでしょうか、突然前の方から大きな女の人の悲鳴と男の人の怒号が聞こえました。
「逃げろ!」
しかし、トンネルは人で埋めつくされており、何が起こったのかもよく分かりません。男の子は本能的に後ろに逃げようとしますが、後ろも人がつっかえており、逃げようとする人と聞こえていない人達がぶつかり合い、男の子は身動きが取れない状態でした。
すると、前の方から悲鳴と共に大きな地響きがなり始めました。さらに悲鳴が大きくなり後ろに逃げようとする人達に潰されながら、彼は前の様子がたまたま隙間から見えたのです。
彼が最後に見たのは、目指していたトンネルの出口が左側から大きく崩れて、人ともに泥になって潰れていく様子でした。
それはどんどん近づいて……とうとう自分達の目の前に来た瞬間、視界が真っ暗になりました。
そこまで見た時、私は飛び起きました。
私は起きた瞬間、とてつもなく悲しみに襲われて泣きだしました。
私は起きた瞬間に、はっきりと悟りました。きっと彼は、誰かに知って欲しかったのだと。トンネルでひっそりと消えたこの記憶のことを。
私は再度何か起こらないかと再び眠りにつきましたが、あれか
後日談:
- 実体験①
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