
「このブローチ、変なんです。見てくれませんか?」
そう言って店に入ってきたのは、少し落ち着いた雰囲気のある若い女性だった。彼女が差し出したブローチは、古びた銀色のもので、中央には小さなオパールが埋め込まれていた。
「このブローチはどこで手に入れたのですか?」
「祖母の遺品なんです。彼女が生前、これについて何も話さなかったので…」
このブローチを前に、霊感を持つことで知られる店主の田中さんは、眉をひそめた。
ブローチから感じる気配には、特に不気味なものはなかった。
むしろ、何か穏やかな雰囲気さえ漂っていた。
だが、女性はこのブローチを身につけると、いつも不可解な出来事が起こると言った。
大事な会議に遅れる、道端で知らない人に絡まれる、さらには電車を逃してしまうことさえあったという。
普段ならありえないことが、なぜかこのブローチを着けた時だけ続いたのだ。
「このオパールに何か呪いがかかっているのかもしれません」と彼女は言ったが、田中さんはその意見には賛同しかねた。
しかし、漠然とした不安感を抱きつつも、その原因を突き止めることはできなかった。
数日後、彼女と再び出会った田中さんは、彼女から驚くべき話を聞かされた。
「祖母が若い頃、あのブローチを盗まれたことがあるみたいなんです。それ以来、祖母はずっと気にしていたらしくて…」と彼女は続けた。
持ち主の女性が、そのブローチを返してほしいと懇願していたが、祖母は頑なに拒否していたらしい。
結局、ブローチは長年放置されていたのだ。
「私も、そんなこと知っていれば…」と彼女は言ったが、田中さんは心の中で恐怖が増していくのを感じた。
彼女はすでに、そのブローチをネットオークションで売り払っていたのだ。彼女の無知がもたらす運命を、田中さんは静かに見守るしかなかった。彼女が知らぬ間に、呪われたアイテムの新たな持ち主が現れようとしていたのだ。
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