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芳香
長編

芳香

匿名 2015年7月12日
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路地裏で、花屋を見つけた。 ショーケースの中は、美しい花々で彩られていた。 その中に、少女がいた。 透き通るように白い肌をした、美しい少女だった。 目を閉じたまま、眠っているかのように体育座りをしていた。 「花の一種ですよ」 店主の男は言った。 なるほど、よく見れば肌は花弁で成形されており、しっとりとした嫋やかな髪は細い蔓のようだ。 それに、何とも言えない甘い香りがする。 「美しいでしょう。私も最初に見たときは驚きました」 それはそうだろう。 こんなに美しい花なんて、他にはないだろう。 「譲ってくださいませんか」 「申し訳ございませんが、非売品でして…。」 私はどうしてもこの花が欲しくなっていた。 「種は採れないのですか」 「分かりませんな。何せ今は一鉢しかないものですから…。」 私は改めて花を見つめた。 頰はほんのりと紅を差したように赤く、温かみを帯びているようだった。 私はそれから毎日、仕事帰りにその花屋に立ち寄った。 「いいものをお見せしましょう」 ある日、花屋の主人は言った。 そして、ガラスの水差しを持ってくると、花に水を振りかけた。 すると、何ということだろう。 花の少女が少し上を向き、手で水を受け止めたのである。 彼女は愛らしい笑みを浮かべて、水を身体に注いだ。 注がれた水は少女の滑らかな肌を滑るように流れ落ち、吸い込まれた。 「この花は、どういう訳か花弁から水を吸い取るらしい」 主人は水差しを置いた。 「見事なものでしょう」 私は声が出せなかった。 ー その頃には、昼夜常に花の事を考えていた。 あの花は。 あの花は。 あの少女は。 そしてまた、仕事帰りに花屋へ向かう。 「喜んでください、お客様。」 主人は店の奥から、布をかぶせた何かを持ってきた。 「何です、それは。」 「あの花の雄花が手に入ったのです。これで種を採ることもできるでしょう。そうしたらすぐあなたにお譲りしましょう。」 「見せてください。」 あの美しい花の雄花なのだから、きっとまた美しい少年の姿の花なのだろう。 主人が布をめくるのを、私は期待を込めて見守った。 だが、その姿は私の期待を大きく裏切るものだった。 「…何だこれは」 「あの花の雄花です」 醜く皺の寄った肌に、潰れたような顔。焼け爛れたように数本しか生えていない蔓の髪。 「こんな醜い花

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