
さっき、1月の「きさらぎ駅での生還」を書き込んだ大学1年の俺だ。
今回は、学年末テストが近づき、3年生への進級を前にして校内が落ち着かなかった、2月上旬の放課後の話をさせてほしい。
その日は部活の用具を片付けに、新校舎と旧校舎を繋ぐ、外の冷たい風が吹き抜ける渡り廊下を、一人で歩いて部室へと向かっていた。
夕方でもう外は真っ暗で、凍えるほど寒かったのを覚えている。
誰もいない静まり返った廊下を進んでいた、その時のことだった。
今回は、俺自身の存在を根底から消し去ろうとしてきた、高2の2月の怪談をここに詳しく吐き出させてほしい。
静まり返った渡り廊下を歩いている時だった。
数メートル先を、一人の生徒が前を向いて歩いていることに気づいた。
何気なくその背中を見た瞬間、全身の毛穴が逆立った。
そいつは、俺と全く同じ防寒着を着て、俺と全く同じ陸上部のバッグを肩にかけていた。
歩き方、体型、全てが俺の「後ろ姿」と完全に一致しているんだ。
えっ、と思って俺がピタッと足を止めると、向こうも同時にピタッと止まった。
そして、そいつがロボットのように、ゆっくりと首をこちらに振り向かせようとし始めた。
その横顔の隙間から見えたのは、目も鼻も口も何もない、どす黒い影の顔だった。
高1からの地獄の経験で、脳裏に最悪のルールが弾け飛んだ。
そいつに完全に振り向かれて、【正面から顔を合わせられては、絶対にダメ】だ。
もし顔が合ってしまえば、俺という存在(オリジナル)の証明が消滅し、明日からはそいつが「俺」として何食わぬ顔で日常にすり替わる。
生き延びるための脱出ルールは、オカルト的な対抗策ではない。
そいつが首を回しきる数秒の間に、【陸上部ランナーとしてのすべての瞬発力を使い、一歩も歩かせることなく、後ろからそいつの防寒着のフードを力任せに引っ掴んで床に引き倒し、そのまま跨がって馬乗りになり、相手の顔を自分の両手で力任せに圧迫して潰す】。
物理的な制圧だけが、この偽物を消滅させる唯一の方法だった。
「ふざけんな……っ!!」
そいつの首がギギギ……と、あと少しで真後ろを向くという瞬間だった。
俺は陸上部で培ったスタートダッシュの全パワーを足に込め、一瞬で距離を詰めた。
そして、そいつのフードを両手でガチで引きちぎるほどの勢いで引っ掴み、コンクリートの床に思い切り引き倒した!
ドシャアァンッ!!!
後日談:
- 気づいた時、俺は誰もいない冷え切った渡り廊下で、一人で床に両手を突いて激しく呼吸していた。 防寒着にもバッグにも、誰かがいた痕跡なんて何1つ残っていない。 【噂すら誰も聞いたことがない、進級を前にして本物の自分を乗っ取りにくる未知の呪い】だった。 だけど、あれは絶対にただの冬の疲れが見せた幻覚なんかじゃない。 なぜなら、あの怪談があってから大学1年になった今でも、俺は【日常で前を歩く人が自分と同じ服を着ていたり、鏡に映った自分の後ろ姿を見るだけで、あの渡り廊下の恐怖がフラッシュバックし、そいつが振り向くんじゃないかと猛烈な悪寒に襲われて動けなくなる】んだ。 特に2月になると、あの日そいつの顔を押し潰した両手のひらがジワジワと熱くなり、冷や汗が止らなくなる。 高2の冬、あの学校の土地は、学年が終わる最後の最後まで、俺の存在そのものを消し去るための最悪な怪談を仕掛けた。 次は、高2最後の月。3月だ。
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