
美術室というのは、ある種の閉ざされた空間だ。
だからこそ、怪談や都市伝説が生まれ、みんなの間で語り継がれる。
しかし、私はそんなものには興味がなかった。皆が遊び半分で話すことだと知っていたから。
授業中、私は一番前の窓側の席で、ガラス越しに外の景色を眺めていた。
――いる。
また見えた。
私は目を逸らさずに、その存在を確認した。
この美術室がある場所は、かつて古い洋館が立っていた場所だと聞いた。
その話を耳にしてから、私は何度もその影を見るようになった。
それが何かと聞かれたら……私は『絵画の中の幽霊』と答えるだろう。
その幽霊は、壁に掛けられた絵画の中から私を見つめている。
静かな教室の中、先生の声と生徒たちの筆の音だけが響く。
その静寂を破るように、幽霊はじっと私を見つめている。
――私はそれに気づかないふりをし、頬杖を突いて考え込む。
幽霊がいる。
しかし、それは私以外には見えていない。
だって、誰も騒いでいないから。私以外には見えていない――つまり、これはただの私の妄想なのだ。
幽霊は動かない。
何を考えているのだろう、と考えた瞬間。
「美咲!」
急に名前を呼ばれ、ハッとして「はい」と返事をすると、担任の佐藤先生は私が見ていた絵を指差しながら言った。
「授業に集中しなさい、そんなところに幽霊はいない。」
他の生徒たちがクスクス笑った。佐藤先生の冗談だと思ったようだ。
私は、背筋に寒気が走るのを感じながら、佐藤先生を見つめた。
彼はそのまま授業を続ける。
私はもう、授業を受けるどころではなくなった。
こっそりと絵の方を見つめると、幽霊はまだそこにいて、私を見てニヤリと笑った。
美術室の壁を伝って、幽霊が私の方に向かってくるようだった。
その瞬間、佐藤先生がちらりとその絵に目をやった。
佐藤先生は若い頃、霊的な体験を語ることがあったので、みんなから一目置かれていた。
彼は授業の合間に語るお話が人気だったが、その中には幽霊に関する話も多かった。
そんな彼が、幽霊はいないと言った。
――お願い、いないって言わないで。
それは、私が見ているものがただの妄想ではないという証明になってしまうから。
佐藤先生もその視線に気づいていて、私を怖がらせないために言ったのだと分かってしまう。
いないと言われたから、私はその存在が現実であると認識してしまった。
幽霊も、私が見えることを理解してしまったのだろう。
これから卒業するまで、私はあの幽霊に狙われ続けるのだろうか?
後日談:
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