
私は歯医者が大好きだった。大学生になった今、私の心の中には、地元で評判の良い歯科医の存在があった。高校時代、彼のところに通っていた私は、毎回の診察が楽しみで仕方なかった。彼は優しく、丁寧で、歯科衛生士たちも温かい笑顔を向けてくれる、まさに歯医者の神様のような存在だった。
しかし、大学進学のために引っ越した私は、その歯医者に通うことができず、新しい町で新たな歯科医を探さなければならなかった。
ある日の夕方、私は近所の歯科医院に予約を入れた。新しい先生に会うのが不安だったが、仕方がない。予約時間になり、待合室で待っていると、緊張と期待が入り混じった感情が湧いてきた。
診察室に入ると、私を迎えたのは年配の男医だった。彼は私の口を開かせ、じっと歯を見つめた。その瞬間、彼の表情が変わった。眉間にしわを寄せ、少し戸惑ったように言った。
「奥歯に複数の虫歯があります。これだけの虫歯は、数年放置しないとここまで進行しません。」
私は驚愕した。そんなはずはない。私は頻繁に歯医者に通い、クリーニングも定期検診も受けていたのだ。信じられなかった。
「それに、あなたのこの状態は……かなり深刻です。」
彼は淡々と続けた。私は恐怖に駆られながら、そのまま治療を受けることになった。麻酔が効くと、痛みが引いていくはずだったが、心の中の動揺は収まらなかった。
その後、彼から見せられたレントゲン写真は、私に深い衝撃を与えた。奥歯は想像以上にひどい状態で、他にも数本の虫歯が確認された。私の頭の中では、あの素晴らしい歯医者の存在が恐怖に変わっていくのを感じた。彼は私にとって神様のような存在だったのに、今はその神様が私を危険にさらしていたのだ。あの時、あの歯医者に通っていたことが、実は恐怖の始まりだったのかもしれない。私の無知が招いた結果だった。
帰り道、ふと振り返ると、歯科医院の看板が夕暮れの中で不気味に光っていた。
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