――もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら、 俺「なんだこりゃ。何て読むんだ」 Ａ「『でこぼこまる』かな？」 Ｃ「『あいまる』だよ。多分ね」 Ｂ「だから『凸凹さん』なんじゃない？ほら、家の形じゃなくてさ！」 ――もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら、 俺「『凸凹サンチヲ、後 造ル』？意味わかんなくね？」 Ｂ「家を後で建てるってこと？でも凸凹さんちってこの家だよね？」 Ｃ「自分の家を建てた後に こんなの貼り付けて、何の意味があるんだろうな？」 ――もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら、 俺「悪徳業者の若者達に殺された老夫婦が、あの場所で怨念となって現れたのが…」 Ｄ「それが『凸凹さん』だ。凸凹さんは時々 自分達が殺された時と同じように嬲り殺しする為に、若者達を おびき寄せてるらしい」 俺「それが俺の入った屋敷って訳だ」 ――もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら、 若「デコボコさんだと？」 爺「わしらは そう呼ばれとるもんで」 もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら、 《 凸ルッテ？ 》 もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら、 《 凹ルッテ？ 》 もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら、 【 凸凹丸家之墓 】 もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら、 もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら、 もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら、 もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら、 もし本当に 凸凹丸 が幽霊名字だったら――、 全ての辻褄が合わなくなる。 あの表札は何だったんだろう？ あの墓石は何だったんだろう？ あの屋敷は何だったんだろう？ あの日 一体、 何が起こり、 何故 襲われ、 何の為に友達が死んだのか、 もうすぐで全ての理由が分かりそうなところで、 全てが分からなくなった。 俺は在るはずのない屋敷には辿り着いたが、 事の真相には――、辿り着けなかった。 この一件、 何が原因で、 何に襲われ、 何に殺されたのか、 本当のところは、 一切の真相に触れることなく、 静かに幕を下ろした。 【 幽霊名字 】 ― 実際には実在しない名字 …