新着 短編
百目

数年前の初冬、会社の帰り道、いつも利用する駅付近の地下道で、小学生くらいの子供が何かを空気入れに繋いでハンドルを上下に一生懸命動かしていた。
日付けも変わりそうな時間だったから違和感があったけど、近くにそういった子達がたむろするアンダーグラウンド的な場所があったから、家出少年かな?くらいに考えて横をサッと通り過ぎた。
そうしたら、小さな声で「すみません」と聞こえた。
近くに誰もいなかったし自分に言ったのかなと思い立ち止まろうとしたけど、正直関わりたくないから聞こえないふりをして早足で進んだ。
そしたらもの凄い勢いで右手を掴まれて、思わず振り向いてしまった。
「お母さんがなおらないから手伝って。」
振り向きざまにそう言われて、思わず「何?」と反応してしまった。
「お母さんがなおらないから手伝って。」
青白い顔をした子供がこっちを凝視しながら空気入れを手渡してきて、訳も分からずそれに繋がれたものを見た時、腰が抜けそうになった。
さっきまで何に繋がれてるのか分からなかったのに、そこには道幅いっぱいに膨れた顔があった。
パンパンに膨れた顔についている目玉のようなものは茶色く濁ってギョロギョロと動き、しかもそれは二つだけではなく散らばるように顔中にくっ付いていた。
「お母さんがなおらないから手伝って。」
さっきと同じようにこちらを凝視する子供に言われて、反射的に空気入れを放り投げて全力で逃げた。
その後も仕事終わりにその道を使っているが、それ以来あの子供は見てないし、変なことが起きたこともない。
あれは一体何だったんだろう。
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