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長編

オカルト信じてないのに

もつ 2017年11月5日
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自分の体験談。 14歳の頃、両親が戸建て住宅を建てて引っ越し、翌年に病気で母を亡くした。 私は地元の高校に進学、姉は頭が超良かったので他県の有名私学に入っており寮生活、父は私が生まれる以前から仕事で海外に単身赴任、1年のうち350日は日本に居なかった、つまり私は高校生になって一人暮らし生活を余儀なくされた。 高校生といってもまだ子ども、運動部にも所属していたので身体は疲れ、さらに一人で食事、洗濯、掃除をこなすのは困難で、私の生活は次第に乱れ、朝も時間通りに起床できず、ロクな物を食べてなかったので栄養失調にも陥った(当時はコンビニがなく飯は弁当屋やスーパーで買っていたが毎日買いに行くのが面倒で、缶詰を買いためて適当に食っていたら栄養失調になった)。やがて1年ほど経った頃、私の生活はみだりに乱れ、深夜に寝付くためどうしても朝が起きられずに遅刻を繰り返し、勉強も追いつかなくなり、進級が危ぶまれる状態に。内心、どうなってもいいやと開き直っていたように思う。 そんな日々が続いていたある時、朝6時頃に家のインターホンが鳴る。それもしつこいほどに繰り返し、繰り返し鳴る。2階で寝ていたため、無理やり起こされて階段を降り、玄関を開けると誰もいない。それが毎日続いた。イタズラだと思い、1階で寝るようにし、インターホンが鳴るとすぐに起きて玄関を開けてやったが、やはり誰もいない。 夜、寝付けず2階の自室で夜ふかししていると、誰かが階段を登ってくるきしみ音が響き、私の部屋の前で止まる。オカルトは信じておらず、超常現象なんて気の迷いくらいに思っていたが、いざ体験してみるともう怖いのなんの。2階から1階のリビングの寝床を移し、電気をつけて早めに寝る、インターホンで起こされる、そんな毎日がおよそ1カ月くらい続いたら、規則正しい生活ができるようになった。この体験を当時のクラスメイトに話すと、「それはきっとお母さんだよ」と。オカルトを信じていないため、そういう発想はなかったが、指摘されて何となく理解した。 こう書くと美談になるが、これはまだ序章。この先には忌ま忌ましい体験が頻発し、事態は思わぬ方向へ。 私としては、オカルトを信じるのは拒否反応があった。だって受け入れちゃうと怖いでしょ。階段のきしみ音、誰もいない部屋に響く「パン!」というラップ音?は、湿気による柱の木材の収縮音、インターホンが鳴るのはクロアリが配線をかじっているため、と自分の中で理屈を組み立てて結論づけた(少し無理やりだったが)。 まぁ、生活の乱れが矯正されたのは、素直に「母さん、ありがと」と心で唱えてたけど。 ある日、さらにおかしなことが起き始める。 私の外出時、誰もいない台所、リビングのガラス窓に人影が動くのを友人や周辺住民が多数目撃、階段だけだった足音は部屋の中や他の場所でも起こり、ラップ音のような謎の大きな音は自分がいる部屋の中でも突如発するように。なんか現象の範囲が広がってねえか?内容も明らかに変わってきている。 これまで「誰かが私に存在を知らしめようとしている」状態だったのが、「家の中をうろつきまわっている」現象に変わり、さらには「誰かが悪意を示し、脅そうとしている」と感じるように至った。 あまり思い出したくないけど、居るはずのない2階で誰かが走っている音がする、風呂に入っているとガラス戸に人影が映る(なぜか子どもなんだ)、電話が鳴ると無言、そして微かな子どもの笑い声、など。 私の状況を心配した近所の幼なじみが時間の許す限り家で私と寝食を共にしてくれて、そのおかげで何とか暮らせる、という有り様。その頃、私は無事に高校を卒業したものの、大学進学で浪人していた。 夜遅くに帰宅したある日、駐車場に自転車を止めて勝手口から鍵を開けようとすると、強烈な「嫌な気配」を胸で感じた(頭で認識するというより、その刹那に胸で受け止めたって感じだった)。 いま入ってはいけない気がして、随分迷ったけど入るしかなくて、鍵を回した瞬間、勝手口のドアが「ドーン!」という音。いや、ほんとびびった。そしてすぐに強い怒りが噴き出してきて、力いっぱい何度も壁を踏み蹴って何やら叫んでしまい、少し離れた隣家の旦那さんが驚いて出てきたほど。 そしてそのまま家を離れ、深夜なので友人宅に向かうこともできず、その日は海の近くの公園で夜を明かした。 その後、これらの出来事を家族に相談。父「家にばかりこもってないで外で身体を動かせ」、姉「すぐに心療内科に行け。二度と連絡してくるな」という有り難いお言葉。相手を間違えた。 友人たちに相談し、対策を練る。 私が遭遇した現象と、家で友人が見た出来事をまとめてみると、「忌々しいもので、家から追い出そうとする勢力」と「何かを訴えようとしているもの」の大きく二つに分類できた。何か悪いものを招き入れてしまったのかも。 「私が家の主人だという強いアピールをしてみては」という友人の提案に従うことに。各部屋は開け広げ、現象が頻発する階段、洗面所などに服やカバンといった私物をそこかしこに置き、リビングや台所は常に音楽をかけるように、家全体を賑やかにするよう心がけた。 ラップ音のような、びっくりする音はすぐに止んだ。 足音や気配はしばらく続いたが、これも友人の勧めで、家にいる際はすべての外窓を開け広げ、網戸だけ閉めた状態にすると止むようになった。 家の現象が落ち着き始めると、留守を友人に託し、私は幼なじみの家に1カ月寝泊まりすることに。当初、67キロだった私の体重は55キロまで減少していた。私自身、憑かれていたような状態だったそうだ。 今日までこの出来事は思い出さないようにして生きてきたが、ふと記録として残したくなったので投稿することにした。ほかにも忌々しい体験はあるが、今はまだ書く気にならないのでここではふれない。 後日、人にこの話をすると「そんな体験したならオカルトを信じるようになった?」とよく聞かれる。 答えは「否」。この世のものだと認めちゃうと、あの闇に飲み込まれそうだから。 あの頃はずっと、「絵本の中の絵と同じ。そこにあるけど存在しない(キューブリックの映画シャイニングのセリフ)」と反すうして距離をとり、理性を保とうとしていた。 でも、洗面所の鏡に映った、スカートをはいたあの幼子の後ろ姿だけは今でも忘れられない。

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