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中編

歩いて帰ろう

匿名 2023年6月13日
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私が18歳のときの話です。 ある日の夜、友人と遊んだ帰り、電車で帰宅していました。夜20時くらいだったかな、最寄り駅に降りたんです。私とほかに数人が降りたと思います。 周囲には駅以外なにもありません。いつもなら、親に迎えにきてもらっていたのに、なぜかそのときは、ふと、(歩いて帰ろう)と思いました。 頑張ったら歩いて帰れる距離といえば、そうなんですが、片道40分以上はかかります。しかも、田舎で街灯も少ないし、人もいない。まわりは田んぼと川と民家だけ。バスもありません。 とりあえず歩き出した私ですが、そこから記憶は曖昧で、何故かは分からないのですが、道を間違って歩いていたようです。 当時、間違っているという感覚はありませんでした。今考えても、そこは何回も通ったことのある道で、間違えるほうが不思議なくらいです。 どんどん歩きました。実は家とは反対方向に進んでいた私。その途中、小さな古い鳥居を横切りました。それはなんとなく覚えています。 草が生い茂ったガードレールを抜けようとして、あっと思った瞬間、用水路に落下しました。草と暗闇で見えなくて、道だと思って足を踏み出してしまったのです。 はっと気づいた私は、 なんで?ここは?と放心状態。 用水路からなんとか這い出てると、目の前に、よく知ったファミレスが見えていました。その眩しい明るさに我に帰り、親に電話して迎えにきてもらいました。 家に帰り、このことを話すと、父が「その道を間違えるなんておかしい。何回も通ったことあるだろう」と。母が「なんで電話しないの??」と。 確かにその通りなんですが、元来の方向音痴もあるので、私は深く受け止めてませんでした。 すると父が、「最近おかしい」と言い出したんです。内心、なにが?って感じでした。 別の話になるんですが、その「歩いて帰ろう事件」が起きる前、通学で同じように電車に乗っていて、寝てないのに、気づいたら最寄り駅を乗り過ごしていたということが、何回かあって。父親は、それも何だかおかしいと。 そこで、父の知っている、いわゆる霊媒師みたいな人のところへ連れていかれることになったんです。オカルト好きというより、ご先祖様や氏神様等、そういう存在を代々大切にする家でした。(父は当時年一回くらい見てもらっていたようです。現在その方は亡くなっています。) 日を改めて、その人のところに父と二人で行きました。小さな古い木造の民家で、部屋には大きな祭壇がありました。色々なものが天井から吊るされていました。 出てきたのは小柄なおばあさんでした。そこで、その人にすぐ「若い男の霊がついている」と言われたのです。 徐霊?と言えばいいのかわかりませんが、鈴のようなものを鳴らしながら、おばあさんとは思えない強い力で背中をバンバンと強く叩かれて、それがものすごく痛くて。 なのに、なんかおかしくて笑いそうになってしまって、なんとか笑わないよう堪えていました。 一応徐霊が終わり、話を聞くと、男の霊は、私の学校生活が楽しそうでついてきてしまったと。(当時大学生になったばかり) また、電車で、寝てないのに最寄り駅を乗り過ごしてしまったのは、守護霊がその駅に降りないように守ったから。 用水路に落ちたのも、正気を取り戻させるために守護霊が落としたらしいです。 (守護霊、雑じゃない?と思いましたが) そのあと、そのおばあさんに、一週間、毎日夜の決まった時間にお茶を入れ、お経を唱えて庭に撒けと言われました。 半信半疑の私をよそに父は真剣でした。 その日の夜から、言われた通りにしたのですが、3日くらいしてから、私が体調を崩して入院することになってしまって。(風邪をこじらせただけで、3日くらいで退院しました) その間、父が代わりに言われた、供養?を行ったと母から聞きました。 ただ、不思議なのは、その出来事のあいだ一度も「怖い」と思わなかったんですよね。むしろ、まわりが真剣で、私は置いてけぼりというか。お茶を撒く意味もよく分からないし。父が代わりにして効果があったのかどうかも不明だし。 それで、若い男の霊がどうなったか分からずじまい、うやむやのままです。この話は無かったことのようになってしまいました。 それ以降なにも無くて変わったことも起きてませんが、夫は「見える人」なんで、なんだか今、ぞわぞわと怖く感じます。

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