
中編
先回り
8823 2020年9月5日
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私が20代前半の頃の事です。
風邪をひいて高熱を出し仕事を休んで自室で寝ていると金縛りにありました。
夕方、玄関から鍵を開ける音がし、母が帰宅した気配がしました。
実際、母でした。
台所で夕飯の支度を始めたのも音で分かっていました。
私は目が開かないのです。
音はずっと聞こえているのに。
母に助けを求めようと声を出すのですが、思うように出ません。
沢山の小さな手が私の胴体の側面を掴んでいるのです。
あばらの辺りです。
そのうち、大人の男が私の上に寝ころびました。
目が開かず、見えないんですが何故か性別が分かるのです。
一度、上の人が起き上がるような動きをし、私から外れそうでしたので、
私は「今だ!」と思って大声を出そうとしました。
でも、上の人がまた寝ころんできて(こんにゃくっぽいシナリがありました)、私は押さえつけられました。
苦しい中、必死で声を出しましたが、聞こえてくる自分の声が現実なのか、頭の中の事なのか判別ができませんでした。
呂律が回らない人のとぎれとぎれの声のようでした。
気づいた母が私の部屋の襖の前までやって来ました。
突如、私の金縛りが解除されました。
部屋に入ってきた母が「寝言いってた?」と聞いてきました。
「ずっと呼んでたのにっ!」と、なかなか気づいてくれなかった母に怒ると、
「うわごとみないなのが聞こえたから、寝ぼけてるんだと思ってた」と返されました。
その家に住み始めて数年経っていたので、霊的なものは今更ないだろう、熱のせいだろうという事になりました。
先週の日曜に母と叔母と、亡くなった祖母の話など昔の話をしていた時のことです。
私はこの話をして、母が気づいてくれなかったと叔母に訴えました。
母「その時の事かな?お母さん(私の祖母)が入院してる病院で・・」
(あの日、母は仕事から戻ったので、”その時の事”ではありません)
母
「帰ろうと思ってエレベーター呼んで待ってたら、布が掛けられたイタイを乗せた寝台を看護婦さんたちが押して来たのよ。それで、エレベーターに寝台ごと乗って『乗りますか?』と聞かれたから、『いいえ』って断った。怖いし、気持ち悪いし。それでエレベーターは降りていった。電車で帰って、駅に着いて、電車を降りたら途端に身体がめちゃくちゃ重たくなったの。歩くのがやっとなくらい(よろよろ歩く動作をしてみせた)。なんとか改札を通って、家に向かったんだけど、もっと身体は重くなって、吐きそうになった。どうにもならないくらい身体の具合が悪くて・・。それでも、やっと家まで帰り着いた。でも、鍵も開けられないから、チャイムを押したら、この子(私)が出てきて鍵とドアを開けて、『今、金縛りにあってた!』と言ったの。何かを連れて帰ってしまったみたい。」
叔母
「連れて帰ってないじゃない。帰る前に金縛りが起こってるんだから!」
先回りされたのなら、母の身体はもっと早くに軽くなっていた筈なんですけど・・。
それと、私の金縛り体験の記憶は前者の一回分しかありません。
母は体験を当日に私に話したそうですが、私には全く記憶がありません。
母には私の体験した金縛り話の記憶がありませんでした。私はよく熱を出していたので、覚えていられるほど特別なものではなかったのでしょう。
玄関ドアを開けたのはどちらも自分ではないし・・金縛り事件は二度あったんでしょうね。
それにしても20年以上経ってから、そんな話が出てくるなんて。
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