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中編

私だけじゃない

あちゃん 2020年1月11日
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大学生の頃、私は学費を稼ぐためにキャバクラでバイトしていた。地方都市の繁華街、実家から電車で10分の所で働いていた。 実家は地方都市の工業地帯の大通り沿い、家の目の前はいわゆる産業道路。その日はバイトが休みで授業が終わったら真っ直ぐ家に帰った。いつもと違ったのは、家の目の前のガードレール脇に花が手向けられ、そして風か何かで倒れていた事だ。それを見た瞬間、「あぁ、この近くで事故で亡くなられた方がいるんだ、花が倒れているのは可哀想‥。」と、私は思わず花を直して家に着いた。 その日の夜、金縛りにあった。実家に居るときに金縛りに遭うのは頻繁で、(いつも決まって夜中2時過ぎ)足音がしたり、首を絞められたり、ビンタされたり、酷いときにはおっぱい揉まれたりしていた(笑) 金縛りには慣れていたけど、この時は違った。いつも薄暗い豆電球を点けて寝ていたが、金縛りに遭ってすぐ、薄目を開けると部屋の右上から恰幅の良い30代後半から40代位のスーツを着たサラリーマンが私に飛んできたと思ったら、首の後ろを掴まれ、"ムズッ"っと、引っ張られたのだ。 気が付くと部屋の宙、首の後ろは掴まれたまま、人生で経験したことのないパニック。薄暗の中で目を凝らすと下で自分が寝ている‥。 「あぁ、私憑れて行かれる、幽体離脱してる、どんどん上に上がって行ってる、ヤバイ、ヤバイ!!まだ死にたくない!!」 そう思った瞬間、思い切り暴れた!部屋のカーテンレールを掴もうとしたり、とにかく手足をバタバタして抵抗した。憑れて行かれたくない一心で子供の様に暴れた。 そしたら、サラリーマンが怒った様に私を下に寝て居る私に投げ付けた。ビュッて音がするくらいの勢いでいきなり投げ付けられて、下に居る自分とぶつかった。「いでっっ!!」そして一緒になった。サラリーマンは消えていた。 とりあえず戻って来たけど、自分と自分がぶつかった時、ビンタされた時にみたいに顔が痛かったのを覚えている。 その後はとにかく方針状態‥。夢なのか現実なのか‥。意味が分からな過ぎて、とりあえず寝た。次の日も大学あるし、バイトもあるし。 次の日、普通に起きて大学行って、授業中は昨日の事はきっと夢だったんだと、リアルな夢だったんだと思うようにした。 バイトは19時から。授業終わって晩ご飯食べて店に入った。19時はフリーのお客様は一人3500円、いつもこの時間はフリーのお客様で一杯。フリー時間目当てで来るお客様も多く、指名でなくても常連客さん達、顔見知りに会う。 その日も、地方では聞き慣れない関西弁のよく来店する30代の顔見知りの常連さんに着いた。いつも「おぉ、相変わらずやな、元気しとんのかい!?」って、とにかくいつも明るくニコニコ聞いてくる常連さん。その常連さんが、その日は違った。余所余所しくて、目線が下で目が泳いでる。私と目を合わせようとしないで、斜め下横を向いてる‥。 直感でわかった。この人、見える人なんだと。 思わず、「もしかして見える人??」って、私も昨日の事があったから、遠慮がちながらすがりつくように聞いたら、「うん‥‥‥‥実は‥‥。」って。「さっきから君の後ろで男の影がウロウロしとんねん‥。」って、斜め下を向きながら申し訳無さそうに言った。 鳥肌がたった。やはり夢じゃなかったんだ。今まで、見てきたモノは夢じゃなくて‥‥‥。 フリーズしてたら少しして、関西弁の常連客が「あっ、もう居なくなったで!もう安心しや、大丈夫だと思うわ!」って、いつもの様に明るく話しかけてくれた。 それからは何もなかった。何日経っても。 あれから数日後、母親に家の前の道路で誰か亡くなったかって花の事を聞いたら、通勤途中のサラリーマンが自転車で車に跳ねられて亡くなったと、遺族が供えたお花でした。 遡って新聞を読んだら○○○○さん(42)が、車に跳ねられて死亡って記事があった。 きっとあの日のサラリーマンだ。 突然で受け入れられなくて、嘆きもがき、どうして良いか分からずに私に憑いて来たんだと思う。 それにしても、私だけじゃなかったんだ。 見える人。

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