
新着 長編
インターホン
ナースコール 3日前
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気づくまでに少し時間がかかった。
細くて白い指が、画面の端に四本だけ写っている。
まるで、カメラの死角から、そっとレンズに触れようとしているみたいに。
「……やだ」
思わず声に出して、再生を止めた。
でも、指先に見えたそれを「気のせい」で済ませられなくて、私はさらに拡大ボタンを押した。
画面が粗くなりながらも、影が大きくなる。
そこにはやっぱり、人間のものとしか思えない手が写っていた。
爪の先が、レンズのすぐ脇をなぞるようにして止まっている。
指の根元は、フレームに切れていて見えない。
誰が、こんな時間に、こんな近さまで顔を寄せていたのか。
そう考えた途端、背中が冷たくなった。
翌日、仕事の帰りに管理会社の事務所に寄った。
録画を見せて、「夜中に何度もピンポンされている」と説明した。
担当の男性は少し眉をひそめて、「最近、上の階でも似たような相談がありましてね」と話した。
「インターホンの前に立ってる人は、録画に写ってるんですか?」
「いえ、それが……誰もいないんです。ただ、インターホンのカメラを塞ぐみたいに、真っ黒になるだけだって」
私の録画の“指”のことを言おうか迷ったが、馬鹿にされそうでやめた。
「しばらく様子を見てください。何かあったらすぐ警察を呼んでくださいね」
マニュアル通りの言葉に少し苛立ちながらも、私は頷いた。
それからしばらく、チャイムは鳴らなかった。
代わりに、別のことが気になり始めた。
夜、帰宅して玄関を開けると、鍵の感触がわずかに違う気がするのだ。
きちんと閉めたはずなのに、軽く回る。チェーンも、かかっているような、いないような微妙な位置で揺れている。
「疲れてるだけだ」と自分に言い聞かせて、寝る前に必ず玄関の写真を撮るようにした。
鍵がちゃんとかかっているか、チェーンの位置が変わっていないか、確認できるように。
そんなことを続けて三週間ほど経った頃、また夜中にチャイムが鳴った。
「ピンポーン」
時計を見ると、午前二時過ぎ。
私は布団の中で固まった。
電気をつけるか、モニターを確認するか、それとも無視するか。
数秒だけ迷ってから、布団をはいで起き上がる。
玄関まで行くのは怖かったので、枕元のスマホを手に取り、インターホンのアプリを開いた。
このマンションのインターホンは、専用アプリからもモニターが見られるのだ。
画面に
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