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インターホン

ナースコール 3日前
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刻を見て、ぞっとした。 今まさに、私がインターホンをいじっている、この瞬間の時間だ。 私は反射的に、その項目をタップした。   数秒のタイムラグのあとに再生された映像は、さっきと同じ構図だった。 玄関とは反対側から、部屋の全体を見渡すようなアングル。 私のうしろ姿が、椅子に座って受話器を握っている。 首から少しだけはみ出した髪の毛や、着ているパーカーの色まで、はっきりと映っている。 私は、固まったまま、自分の後頭部を眺めることになった。 そのとき、画面の中で、私の後ろに影が差した。 玄関のほうからではない。 ベッドと壁の隙間、家具を動かさないと人が入れないような狭いスペースから、何かがにじみ出るように伸びてくる。 黒くて細いもの。 最初は、また指かと思った。 でも、それは床からではなく、天井のほうから降りてきている。 頭のない、髪の毛だけの束のようなものが、ゆっくりと私の肩のあたりまで垂れ下がってくる。 画面の中の私は、それに気づいていないらしく、じっとインターホンの受話器を見つめている。 ふわり、と髪の束が揺れた。 その毛先が、私の後頭部に触れそうになったところで、映像はふっと途切れた。 モニターが真っ暗になる。 部屋の静けさが、一気に耳に戻ってきた。   私は振り向けなかった。 椅子に座ったまま、息を殺して、背中越しの空気の重さを感じていた。 天井から何かが垂れている気がする。 首筋に、誰かの息のような、生ぬるいものが触れた気がする。 でも、振り返ってはいけないような気がした。 ゆっくりと、手だけを動かして、受話器の電源ボタンを押す。 モニターが完全に消える。 代わりに、玄関のほうから小さな音がした。 「ピンポーン」 インターホンのチャイムが、もう一度鳴った。 今度は、モニターをつける勇気はなかった。   ……あなたの部屋のインターホンにも、録画機能が付いているなら、一度だけ確認してみてほしい。 誰も来た覚えのない深夜の時刻に、履歴が残っていないか。 もし「室内映像」という項目が増えていたら――その再生ボタンを押す前に、まずは自分のうしろを、よく見たほうがいい。

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