
ある寒い冬の夜、姉の元に弟が帰ってきた。二人は山奥にある小さな山小屋に住んでおり、両親は数年前に遭難して亡くなっていた。姉は34歳、弟は32歳で、互いに仕事が不規則なため、生活は不便ながらもなんとか成り立っていた。
その日の仕事が終わり、姉は帰宅すると、疲れきってソファに崩れた。腹が減ったことに気づく。
「今日は何か作っておかなきゃ……」
そう思いながら、冷蔵庫を開けるが、特に食べられるものはなさそうだ。
「弟が今日は当番だったのに……」
彼女はため息をつき、冷蔵庫を閉じる。すると、ふとキッチンに目をやると、煮物の香りが漂ってきた。
「もしかして、もう作ってくれてるの?」
この日は弟が料理当番だったのだが、彼女はそれを思い出し、期待に胸を膨らませた。
しかし、弟の生活は夜型で、彼女が帰る頃にはまだ起きていないことが多い。姉は鍋を開けると、煮込まれた根菜が目に入った。その中には、彼女の好物の一つ、里芋があった。
「いただこうかな……」
そう思いながら、姉は一口食べる。温かく、ほっこりとした味が広がり、空腹感が満たされていく。
里芋を食べ進め、最後には一番大きなものを口に運んだ。
「これが一番美味しいのよね……」
その時、里芋の表面が突然、波のようにうねり、姉の目の前で動き出した。
「え……?」
驚きつつも、何かに引き込まれるようにそのうねる里芋を見つめる。すると、次の瞬間、彼女の心に怒りが湧き上がった。
「こんなことありえない!」
冷静ではいられない感情が彼女を支配していく。
「うわあああああ!」
衝動的に里芋を皿に叩きつけ、音を立てた。
すると、二階から弟の叫び声が響き渡る。「姉ちゃん、なんだ!?」
驚いた姉はすぐさま階段を駆け上がり、弟の部屋のドアを開けた。すると、彼は苦しみながら倒れ込んでいた。
「何があったの!?」
彼女は急いで救急車を呼ぶ。
病院に運ばれた弟は、医者から「左目が潰れています……失明は免れないでしょう」と告げられる。
姉は愕然とした。
「私が食べた里芋が原因なのか?」
弟は顔を伏せ、沈黙したまま、彼女に視線を向けた。
それからというもの、二人の生活はぎこちなくなり、会話も少なくなった。
「私があの時、もっと気をつけていれば……」
姉は自分を責め続けるのだった。
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