
数年前の冬の夜、薄暗い廃工場での出来事だった。俺は、かつて犯罪組織の傘下にあった企業で、見習いとして働いていた。上司は「川島」と呼ばれる50代の男性で、彼は冷酷なまでに仕事をこなすことで知られていた。
俺がこの仕事に就いた背景には、高校時代の不良仲間とのトラブルがあったからだ。普通の職には就けず、先輩の紹介でこの企業に入った。
普段は雑用や掃除が主な仕事だが、ある日、川島が俺を現場に連れて行くと言った。目的は、滞納している顧客の取り立てだった。
一件目は佐藤(仮名)という男性で、ボロボロの家に住んでいた。ドアを叩くが返事はない。川島は大家から鍵を借り、部屋に入ると、そこはまるでゴミ屋敷のようだった。
中には泥酔した佐藤が寝ていた。川島は彼の耳を引っ張り、怒鳴りつけた。佐藤は慌てて目を覚まし、金がないことを泣きながら謝った。川島は「お前、今いくら持っている?」と尋ねると、彼は925円しかないと答えた。
「2日以内に金を用意しろ」と言い放つ川島の声に、冷や汗が流れた。
次の顧客は高齢の女性、木村(仮名)だった。彼女の家を訪れるも、留守だった。川島は「行くところがある」と言い、パチンコ店へ向かった。
そこで見つけた木村は、普通のおばあちゃんのように見えた。彼女は笑顔で「ごめんなさい」と言いながら、封筒を差し出した。中を確認した川島は、安堵の表情を浮かべた。
帰り道、俺は彼に「あの佐藤さんは、もし2日後にお金を用意できなかったらどうなるんですか?」と尋ねた。川島は「売るさ。労働力としてな」と平然と答えた。
俺は震え上がった。数ヶ月後、佐藤の名前がリストから消えた。川島は「顧客が減った」と言い、次の営業に行く準備を始めた。俺は心の中で恐怖を感じた。
俺はこの仕事から足を洗ったが、リストから消えた人たちの行く先が気になって仕方なかった。彼らは今、どこでどうしているのだろうか。
廃工場の冷たい風が、俺の背筋を凍らせた。
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