
高校時代の友人Kから聞いた話だ。
Kには、同級生のYがいた。彼は恐怖体験を語るのが大好きで、人を怖がらせることに快感を覚えていた。特に、夜の山道や廃屋での心霊体験を話すのが彼の特技だった。ネットが普及していない時代、彼が持っていた情報源は限られていたが、友達に語る内容は常に新鮮だった。
しかし、ある日、Yの話を聞く友人たちは次第に飽きてしまい、彼を無視するようになった。Yはその状況を打破しようと、ある恐ろしい噂を持ち出すことにした。
「そこには呪われた廃工場がある。そこに行って呪文を唱えれば、亡霊が現れるかもしれない。」
周りは興味を示さずにいたが、ある女子が言った。「Yの話なんてただの作り話でしょ。本当に怖い話なら、実際に行ってみればいいじゃん。」
その言葉にYは反論するが、彼の声は小さくなり、周囲の笑い声が響く。すると、Yは意を決して言った。「じゃあ、放課後に行こうぜ。本当のことを証明してやる。」
放課後、Yと彼を嘲笑った友人たちのグループ、合計5人は、山の中にあるその廃工場へ向かうことになった。Yは彼らを引き連れ、ウキウキしながら道を進んだ。
廃工場に到着すると、目の前には朽ち果てた鉄骨とガラスの散乱が広がっていた。薄暗い中、彼らは恐る恐る工場の中に入った。中はごみだらけで、外の不気味さとは裏腹に、実際はただの廃墟だった。彼らは失望しながらも、2階に上がることにした。
2階は暗く、冷たい風が吹き抜けていた。Yは呪文を唱え始めた。「新井さん、新井さん、いらっしゃいますか。いるなら合図してください。」
その瞬間、静寂が破られ、誰もが息を呑んだ。次の瞬間、ドン!と音がした。友人たちは恐怖で固まり、Yはさらに続けて呪文を唱えた。「新井さん、新井さん、いるなら出てきてください。」
すると、階段を上る音が響いてきた。恐怖に包まれた5人は、固唾を飲んで階段の方を見つめた。音が近づくにつれ、Yは顔を引きつらせた。まるで何かが近づいてくるようだった。
その時、1人の友人が叫んだ。「逃げろ!」
彼らは一斉に階段を下り始めた。後ろから、異様な気配を感じながら必死に逃げる。しかし、Yだけはその場に留まっていた。彼は何かを見てしまったのだ。目が合った瞬間、Yは震えながら呟いた。「本当のことだったのか…」
友人たちは外に飛び出し、助けを呼ぶために山を駆け下りた。廃工場の中は静まり返り、Yの声は聞こえなかった。彼は置き去りにされてしまった。
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