
僕は学校で特別支援学級に通っている。周りの子たちと比べて勉強が遅れていて、いつも先生に助けてもらっている。
そんなある日、道徳の授業で「虐待について」話し合う時間があった。
「ある家庭で、子どもがひどい目にあっていたというニュースを知っていますか?」
担任の先生がそう言った時、僕は心が重くなった。ニュースには、ある女の子が養父に虐待されていたという内容が流れていた。彼女は、部屋に閉じ込められ、食事も与えられず、毎日謝罪文を書くことを強いられていたという。
その時、隣の席に座っていたクラスメイトのKが呟いた。
「すごいよね、まだ小さいのにちゃんと文章を書けて、賢いなあ。」
彼の言葉に僕は驚いた。
「でも、なんでそんなことを言うの?」
思わず問いかけた。Kは笑って、
「だって、可愛い子がそんな目にあうなんて、もったいないでしょ?」
その言葉に、僕の心は凍りついた。
可愛くない子は虐待されても平気なんだろうか?
この女の子は、賢いから頑張って謝罪文を書けたんじゃなくて、ただ生き延びるために必死だったんだ。
僕が普通の子たちと違うのは、こういうことを考えることができるからだと思っていた。
でも、普通の子たちの中には、想像力が欠如している人がいることを思い知った瞬間だった。
その時、Kの笑顔が怖くなった。
自分が何を言っているのか、全く分かっていないのだろうと。
そして、そんな彼を見ている自分が、少しだけ恐ろしかった。
僕は、何が正しくて何が間違っているのか、分からなくなってしまった。
それが、怖さの裏側に潜む真実だった。
彼の言葉が、僕の頭の中でずっとリフレインしている。
「可愛いのにもったいない」
その言葉が、心の奥に潜む暗い影のように、いつまでも消えなかった。
僕はただ、何が本当に大切なのか、考え続けるしかなかった。
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