
長編
古いオフィスビルでの出来事
*ゆん* 2017年1月15日
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以前勤めていた会社ビルでのことです。
私は個人宅にまわる営業の仕事してました。
会社は土日祝が休みですが、当時、担当のお客さんの都合で土曜日に仕事する事が月に1回くらいありました。
それでも1軒回るだけですので、前日の金曜日に仕事の準備して自宅に持ち帰り、自分の車で直接お客さんの所に行くようにしてました。
というのも、会社事務所は古いオフィスビルの賃貸で、土日祝は警備セキュリティがかかり、解除するためには、最上階の大家さんに連絡するか、居ないときは警備会社に連絡しなければならず、とても面倒くさいので、会社に入らなくてもいいようにしてました。
この話は、この土曜日に起きた不思議な話です。季節は確か9月か10月だったと思います。
前日の金曜日、会社の仲間で遅くまで飲んでいました。
次の日はお客さんの所に行くのですが、午後3時に行けば良かったので、気にせず終電まで飲んでました。
そして翌日、昼頃に起きて準備して、家を出ました。
昨日の飲み会のせいなのか、体調が悪く、ちょっと飲みすぎたなと反省してました。
もう少しでお客さんの所に着くというところで、納品する物を忘れたことに気がつきました。
自宅に置いてあるので取りに帰ればいいのですが、いまの場所からだと、会社の方が近い。
面倒くさいですが、会社のセキュリティを解除して取りに行くことにしました。
それでも、お客さんとの約束の時間に遅れてしまってはいけないので、先に連絡しておくことにしました。
私はお客さんに
「ちょっと、前のお客さんのところでトラブルになっちゃって...。すいません、1時間ぐらい遅れます!」
と、嘘の理由と時間を多めにサバ読みし、そして、お客さんは
「いつも休みに悪いね~。しかし休みにトラブルなんてついてないね(笑)!うちは、今日中なら大丈夫だよ。ゆっくりどうぞ(笑)」
と言ってくれました。
自分のミスなのでちょっと申し訳ない気持ちになりながら、会社に向かいます。
会社のビル前に着き、セキュリティ解除のために、インターフォンで大家さんに連絡します。
大家さんが出て、
「はいはい?どうしましたか?」
私は
「4階のものですが、忘れ物を取りに来ました」
大家さんは
「ああ、そう。今日はエレべ……ガッ!……な……ガガッ!…階段に……ガガッ!……開けますね。」
雑音が入り、途切れ途切れでよく聞き取れなかったのですが、セキュリティが遠隔解除され、入口の鍵が開きました。
「まあ、多分エレベーターか階段が使えないってことだろう…。確認しながら使えばいいや…。」
と思いながら、ビルに入りました。
まず、エレベーターの上のボタンを押し、動くか確認しました。エレベーターは1階に停まっていたので、すぐに扉が開きます。
「ああ、動くんだ。
階段が使えないってことかな.....」
と思いながら扉が空くのを見ていたら、中にモップだけ乗ってました。
モップにちょっと驚きましたが、多分大家さんはこの事を言いたかったのかな?と思い、乗り込みました。
エレベーターの扉が締まり、体調も悪かったせいか、私はボーッとしてました。
しばらくして、ふと気づくと、
「あれ?エレベーター動いてない?!」
と焦りましたが、
階数ボタンを見るとすべて消えてます。
「ああ、行き先ボタンを押し忘れたんだ...。そりゃ動かないよ...。」
と自分を納得させながら、行き先階のボタンを押そうと手を伸ばした。
すると、エレベーターが動き始めました。
「あれ?なんで?」
と思いながらも、会社事務所がある4階をすぐ押します。
ボタンが光り、エレベーターの進行を扉の上の階数を示す番号の光で確認します。
2階……
3階……
あれ?
止まりました...。
誰かが外から押した?
でも、入口のセキュリティがかかっていた事を考えると、私の他はいないはず...。大家さんか?
と考えていると、扉が開きます。
3階は、電気がついておらず、非常階段の灯りだけです。ビルメンテナンスをやっている会社です。
エレベーターから降りずに、ちょっと顔を出して見回しても誰もいません。
「なんだ?なんで止まったんだ?
気味悪いな...。」
と思い、エレベーターの閉めるボタンを早めに連打して押し、扉が締まり、4階に動き始めます。
「よかった...。」
とホッと息をつき、無事に4階の会社事務所に着きました。
お客さんに納品する物を準備して、ちょっと余裕もあったので、他に仕事のやり忘れかないか確認しました。
会社にくると、余分な事までやってしまうもんですよね。
すると、
ゴゴゴゴッ!!
と、下の階から一斉に椅子から立ち上がるような、大きな引きずる音がします。
「えっ?!
誰かいる?しかもすごい人数!?
なんで?!」
私は驚き、会社事務所の入口を見ます。
階段を昇ってくれば様子が見えるので、下から誰か上がってくるかも知れないと警戒しました。
...しばらく、そのまま見てましたが、誰もきません。
「…下に降りていった?」
でも、おかしい。
さっきは3階に誰もいなかった。
それに、気のせいにしては、音がハッキリして大きすぎる...。
ただ、直接見に行くのは怖いので、階段の踊り場から下を覗いて見ようと思いました。
事務所を出て、階段の踊り場から下の様子を見ました。
すぐ下の踊り場はみえるけど、何故かいつもより暗い...。
電気がついてないのはわかるが、何でだ?
と考えた...。
あっ!あるはずの外光を取り込む窓が3階にない...。
なんで?ここどこ?
と思ったとき、
ゴゴゴゴッ!......
ゴゴゴゴッ!......。
さっきの音がします。
そして断続的に音がして、音がするたびに、床に振動が伝わってきます。
地震か!?
と思ったとき、下の踊り場に3階から出てくる大きな白い蛇がうっすら見えました。そして、とてもゆっくり壁に体を擦りながら進んでいて、このままだと多分こっちに上がって来きます..。
「やべっ!見つかる!」
と思い下を見るのをやめ、
「ここはどこだ?
あの蛇は何なんだ?」
考えても答えはわかりません。
このままここにいたら、蛇が上がって来ます。
さて、会社に逃げて身を隠すか?さらに上に逃げるか?
どちらにしても逃げ場は無い気がしました。そのとき、閃きました。
「あっ!最上階に大家さん...」
もう短い一瞬でいろんな事を考えました。多分大家さんのところに行くのが正解のような気がしました。
そして、持っているものは邪魔なので、その場に手放し、上にダッシュしました。上の階は外光が入る窓があります。
大家さんは6階!
階段をかけ上り、6階の扉の前に来ました。
実は大家さんとは、インターフォンで話したことはあるのですが、直接会うのははじめてでした。声のイメージでは60代の女性です。
呼び出し用の鈴がドアの上についていて、太めのひもがぶら下がってました。紐を揺らして鈴を鳴らし、ドアを叩きます。
一気にかけ上がったので、息が上がっています。
振り返って見回すと蛇はいません。
音も聞こえなくなってます。
「追い付けなかったのか?…
他の階に入ったのか?」
と思っていると、
中から扉が開き、年配の女性が覗きます。私はまだ、息が上がっていて、うまく話せず、はじめて会う大家さんに
「あの......」
大家さんは、
「あらあら、階段つかったの?」
「こっちに入って、ここから出なさい」
私は言われるがまま、鈴の扉から入って、すぐ左の壁の扉から出ました。
前の景色をみて、
「えっ?!なんで?!おかしい!!」
ここは会社ビルの裏側の外側につている非常階段です...。
しかも、見慣れた灰皿が置いてあるので、4階のうちの会社の裏の非常階段に出た...。
すぐに振り返って扉を見ると、さっきと違う扉で、見慣れた非常扉です。鍵を確認すると、閉まっている...。
「いったい今まで何だったんだ?」
そう思いながら、非常階段を降りてビルの入口に回り込もうとしました。
すると、携帯電話が鳴りました。
お客さんからです。
「どうした?ずいぶんトラブルに手間取ってるな?こっちから何回か電話しても繋がらないし......。あとどれぐらいかかりそう?」
私は
「ああ、すいません。ちょっと手間取ってまして...。あと、1時間くらいで行きます!」
お客さんは
「おいおい、さっきから1時間以上たってるよ!まだかかるの?しょうがないな~。待ってるよ!」
えっ?!そんなに時間たってる?
携帯見たら16時18分。多分ビルに最初に入ったのが14時ぐらい。
自分が思ったより1時間ぐらい余分に時間が経っている気がする...。
そう思いながら、歩いて会社ビルの入口に来ました。
さて、さっきの事を大家さんに聞きたいし、結局忘れ物も置いてきてしまってます。
もう一回インターフォンを押すと...
誰も出ません。
「えーっ、なんで!
さっき大家さんいたじゃんっ!!」
と泣きたくなりましたが、
またさっきみたいなのは怖いし、お客さんも待ってるので、もう取りに入るのはあきらめ、自宅に取りに帰り、その日はお客さんにお詫びしてなんとかなりました。
そして次の月曜日。
会社に出勤し、社長に3階の蛇の話をしました。
「なんだ。おまえも見たのか!」
と言い、私の前ですぐにどこかへ電話をかけました。
「はい。また、うちの社員が見たそうなんです。はい、はい...」
と誰かと話したあと、社長は、
「今から大家さん来るから話せ。」
と社長から言われました。
すぐに大家さんが上から降りて来ました。
私は大家さんを見て、
「あれ?昨日の人じゃない...。見間違い?!」
と思いました。
そのまま大家さんは
「蛇の大きさは?」
「数は?」
「人はいたか?」
と質問攻めです。
私は
「...あの、ちょっと待ってください。土曜日ビルのセキュリティ解除してくれたおばさんは誰ですか?」
大家さんは
「なにいってるの?土日は誰もいないよ...。」
私はちょっと信じられないと思いながらも、土曜日にあったことを説明していきました。
いろいろなおかしな所がありました。
まず、
・エレベーターにモップを置いてない。
・大家さんの居住エリアに階段で行くと、5階からの階段には扉があって、普段は入れないようになっている。
・呼び出しに鈴なんてない。インターフォンついてる。
全て話終わると、大家さんは、
「聞いた感じだと多分大丈夫だけど、今度猿田彦さんにお祓いにいきなさい」
「このビルには10年ぐらい前から白い蛇が棲んでるんだよ。でもね、商売繁盛で縁起がいいんだよ。」
と言われた。
すると社長が続けて
「おれは会ったことがないが、何年かに一回、うちの社員で蛇に会うやつがいるんだ。それは決まって金曜の夜でな。階段を上っていくところを見たとか、上から降ってきたとかだな。大きさもバラバラで、人ぐらいの大きさから、うなぎぐらいのやつが数えきれないぐらいいたりするらしい。中には顔の白い人の集団が階段を上っていくところを見たってやつもいたな。」
「今回のビルに土曜にはいってって言うのははじめてだ。でも、確認したらセキュリティは解除されてなかったらしいぞ。お前が持って出た届け物は確かに1つ無くなってるけどな。」
いろいろ話を聞き、私は落ち着いて考えました。
あの時に建物から出してくれた女性は、ラフな感じだけど、着物で、顔は白かった。化粧だと思ったし、格好との違和感がなかったので、そのとき気がつかなかったが、時代的におかしい。
あと、そこの呼び出し用に鈴があったけど、なんか今思えば神社の鈴みたいだ。
その後、私はお祓いにいきました。
大きな神社でした。
お払い中に大きな太鼓を叩くところがあるのですが、叩くたびに鳥肌がたって、怖い気持ちになりました。ですが不思議なことに、どんどん体が暖かくなってきて、終わるときにはスッキリしました。
このあと、この会社でいろいろ小さな不思議なことはあったのですが、また機会があれば投稿します。
長々失礼しました。
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