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コピペ 村はずれの小屋(後日談)
長編

コピペ 村はずれの小屋(後日談)

匿名 2016年7月14日
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884 :733 5-1:04/11/29 20:11:26 ID:v6kaMasJ 小屋が無くなってから数日後、Jの友人(A)と共通の友人(B)とで集まった時に、 Bが「Cから聞いたんじゃが、なんでも夜中に、鬼婆の霊がCの家の戸を叩きよるらしいで」と話した。 家に帰り、その事を父に伝えると、 「人は死んだら戻って来るでな。なーに、49日が過ぎれば無事成仏するで、気にする事ぁねえ」 「でも、なしてCの家に戻るのね?自分の家に戻りゃあええのに」 「梅さんは少し変わっていたでな。帰る家を間違がえてるだけだで」とアッサリ言ったので、 Jは「なんだ、あたりまえの事なのか」と思った。 ところがそうでは無かった。 どうもCの親が、くじ引きか何かで梅がいた小屋を燃やす役目になってしまい、 それが梅の恨みを買ってしまったらしいのだ。 それは近所の大人達が、 「Cの家に、またイブシがやって来しゃったらしい」 「小屋を燃やしたもんで、怨みを買うたんじゃろ」 と話をしていたのを聞いたからだ。 このイブシ?(聞いた事のない言葉だったので忘れてしまったらしい)という言葉は、 この村だけのいわゆる『隠語』というやつで、恐らく『幽霊』の意味ではないかとじっちゃんは言った。 大人達は、「梅の霊の事は村民以外には話すな。話すと霊がその人の前にやって来る」と言うので、 それを恐れた子供達は、誰1人として話さなかった。 また、大人達は隠語を使う事により、うっかり他の場所で喋っても、村の恥部が他人に漏れずに済む。 とにかくそこの村民は、自分の村を守る事に必死だったらしい。 885 :5-2:04/11/29 20:12:21 ID:v6kaMasJ 夜な夜なやってくる梅の霊に、Cの家族は疲れてしまったのか、 「わしらも子も眠れんで困っとる。家を出るしか無かろうか?」と、Jの家に相談にやって来た。 Jの父は、 「しばらく家を捨てるしかあるまい。  最悪、あの家は一度ばらしなすって、作り直しゃあええ。  その間は家に住みなっせい」 こうしてCの家族は、Jの家に同居する事に。 さっそく自分の部屋で、JはCにこう聞いた。 「なぁなぁ、Cは鬼婆のお化けを見たんか?」 「見とらん。ただ、家のドアを叩く音が毎晩するんじゃ」 「風とかじゃ無かろうか?」 「知らん。  最近は耳に布切れ押し込んで寝てまうで、音は聞こえんが、  一晩中電気がつけっぱなしなもんで、全然眠れんわ」 886 :5-3:04/11/29 20:14:28 ID:v6kaMasJ 「おい。今日のイブシ除けは済みなすったか?」と、父が母に指図をする。 イブシ除けとは、いわゆる『魔除けの一種』で、玄関の軒先に、スルメや餅や果物等をぶら下げておくのだ。 この村では、人が死ぬと毎度行う儀式だった。 「朝になると、吊るしておいた食い物が無くなっとるんじゃ」とCは言うが、 「いや、猿に持っていかれたんじゃろうて」とJは否定した。 それでもJは不安だった。 「Cの家族が家に来た事で、鬼婆も家にやって来るんじゃなかろうか?」と、嫌な予感があった。 そして夜、Jの隣ではCがぐっすりと寝ている。 耳から詰めた布が、はみ出しているのが可笑しかった。 下の階では、ガヤガヤと大人達の声がする。 しばらく天井をボーッと見ていると、「ドンドンドン」と太鼓のような音が響いた。 同時に大人達の声も、一瞬ピタリと止んだ。 Jの予感は適中した。梅が家の玄関を叩いてるのだ。 Jはそう思うと恐くなり、ユサユサとCを揺り起こした。 「ううん・・・なんねー」と寝ぼけるCに事情を説明。 共に震えながら、大人達のいる1階に降りて行く。 大人達はボソボソと何かを喋っている。 Jが怯えながら「お父・・」と言うと、「気にする事ぁねえで、さっさと寝なっせ」。 またガヤガヤと、大人達は別に気にする事なく、普通にビールを飲みはじめた。 887 :5-4:04/11/29 20:15:39 ID:v6kaMasJ 次の朝、Cと一緒に玄関を出ると、魔除けの食い物が無くなっていた。 「な?俺の言う通じゃろ?」とCが言う。 その事を親に聞くが、「あれは朝1にしまい込むでな」と答えるだけであった。 そしてソレはしばらくの間続いたが、ドアをノックする音がしなくなると、 「ああ、49日が終わったのだな」と思った。 その村では、49日が過ぎるまで墓を作らなかった。 遺体は火葬か土葬をしておき、49日が来るまでは「魂を遊ばせておく」そうだ。 村のはずれには集合墓?があり、村人はここに埋められ墓が作られる。 しかし、梅の墓は別の場所に作られる事になった。 「御先祖様の墓とキ○ガイの墓を一緒にするのは申し訳ない」という理由だそうだ。 死んでもなお村人として扱われない梅に、Jは少し同情したが、 怒られるのが恐いので、口にする事はしなかったそうだ。 888 :5-5:04/11/29 20:17:05 ID:v6kaMasJ そして、梅の墓は川原に作られた。 墓といっても1、2本の縦長の板で出来た簡易な物で、 さらにその回りには囲いも何も無く、「ただポツンと立っていた」そうだ。 しかも、川のすぐそばに立てられている為、ちょっと強い雨が降ると、増水した川に流されてしまう。 実際梅の墓は、1ヶ月もしない内に流されてしまった。 流されるという事は、人に忘れられてしまう。まさに『水に流す』のである。 流されてしまってはしかたがない。俺達は悪く無い。 そんな『自分勝手な不可抗力』という名の殺人や非道が、その村ではあたりまえに行われていたらしい。 身内がそばに居ないというだけで、人1人が村ぐるみで消されてしまう恐怖。 そして、それをあたりまえと思う大人達に、Jは恐怖した。 「自分も大人達の機嫌を損ねたら、何されるかわからん」と・・・ だから、その村では大人が絶対であり、いわゆる『不良』と呼ばれる子供もいなく、 子供は大人達の従順者であった。 「村落という閉鎖的な場所で、独自的な文化を持つというのは恐ろしい事で、そこでの常識は常に非常識だった。  あのまま村で大人になったら洗脳されて、あの大人達と同じになっていただろう。  だからお前は、たくさん友人を作って、色んな人の意見に耳を傾けて、  常に自分の行動に間違いが無いか疑問を持て」 と、死んだじいちゃんは語ってくれた。

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