
長編
クソカミ
匿名 3日前
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はお礼を言うと、おじいさんが手に水をかけてくれるのでそれで手を洗った。すっかり用も済んだところで、もう一度お礼を言い、立ち去ろうとした。するとおじいさんは再び声をかけてくる。
「お供えありがとう」
私がポカンとした顔をしていると、それを見て話をつづけた。
「この石碑はとても古いものでな、江戸時代からここにある」
老人が指す先には、軽自動車の鉄チンホイールほどの大きさの石が置いてある。石には、錆び切ったトタン板と木で作った、祠のような形の覆いがされている。目を凝らすと、ミミズがのたうったような細い線の下手クソな文字で
「クソ
カミ」
と彫られていた。おじいさんはさらに続ける。
「この神様にはな、その昔、人間の大便をお供えするという風習があったらしい。もっとも、そんな風習も、この神様のことも皆忘れてしまっていた。しかし、クソカミ様は何年か前にオラの夢さ現れてな、『山に人間のクソを備えるように』とそう言った。オラもそんな風習は聞いたことがなかったよ。でも夢を見て、それをしなければなんないと思った。それから急いで、知り合いのツテでこの便所を買ってきた。夢に見た山さ来ると、見たこともなかった石碑があったんだよ。山に便所を置いて、ことあるごとにここさ来てクソをした。やっぱり、神様ってのはすげぇんだ。本当にお供えの効果があったんだよ。オラはお供えするようになってから、もう何年も便秘知らずだ。それからな……」
おじいさんは早口になって語り続ける。誰も聞いたことのない風習、しかも、人糞がお供え物?――何を言ってるんだ。挙句の果てにその効果は便秘が治った?誰も知らない、見たこともない石碑が、江戸時代から存在するなんてどうして知っているのか?聞いているだけでおかしな話だ。はっきり言ってバカバカしいと思った。このような頭のおかしい人物とは妙な縁を作りたくない。
「あの!おトイレありがとうございました!もう行かないと」
おじいさんの言葉を遮って礼を言い、その場を後にする。するとおじいさんも
「こちらこそお供えありがとう」
と抑揚のない声で言った。
車まで向かう途中、今度は頬かむりをしたおばあさんが現れて挨拶をしてくる。
「こんにちは」
私も
「こんにちは」
とあいさつを返すとおばあさんは続けた。
「あんたさん、あのKさんのとこのじいさまと話したか?神様とかなんとか変なこと言ってたべ。江戸時代からとかなんとか。あれは全部作り話だか
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- けっこう怖いな