
中編
地獄の理科…
匿名 3日前
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# 鈴木くんの窮境
あの日の教室は、春の日差しが窓から差し込み、黒板に浮かぶ粉塵が天国への階段のように輝いていた。私はただの傍観者であった。人生とは、結局のところ、他者の苦悩を眺めるだけの長い廊下なのかもしれない。
隣に座る鈴木くんの顔色が青ざめていることに気づいたのは、理科の授業が始まって十分も経たぬうちであった。彼は時折、腹部に手を当て、小さな呻き声を漏らしていた。まるで内側から何かに蝕まれているかのように。
「大丈夫か?」と私は小声で尋ねた。愚問であった。明らかに大丈夫ではない。しかし人間とは、そうして明白な真実を言葉で確かめずにはいられない哀れな生き物なのだ。
「う、うん...大丈夫」
鈴木くんの声は震えていた。彼の額には冷や汗が光り、その瞳には恐怖の色が宿っていた。私には分かっていた。彼の内部では、激しい闘争が繰り広げられているのだ。肉体という名の牢獄の中で、尊厳と生理的欲求が死闘を繰り広げているのだ。
小学生にとって、排便とは恥辱の象徴である。いや、それは人間という不完全な存在すべてに課せられた、永遠の十字架なのかもしれない。我々は皆、美しさと醜さを同時に抱えている。それを認めることこそが、真の成熟というものではないだろうか。
鈴木くんは次第に机に突っ伏すようになった。まるで嵐の中で折れそうになる若木のように、彼は自分の内側の嵐に耐えようとしていた。私は彼の苦悩を見つめるしかなかった。それが友情というものなのか、あるいは人間の残酷さなのか、私には判断できなかった。
「鈴木くん!授業中に居眠りをするとは何事だ!」
理科教師の声が、教室に雷のように響き渡った。鈴木くんは震える手で教科書を持ち上げた。彼の指先は蒼白で、まるで死者の手のようであった。
「立って、43ページを読みなさい」
鈴木くんはゆっくりと立ち上がった。彼の足は揺れ、顔は蝋のように青白かった。私は彼の瞳に映る絶望を見た。それは深淵のように暗く、そして底知れなかった。
彼は教科書を開き、異常なほど大きな声で読み始めた。その声は教室中に木霊し、まるで彼の存在そのものが叫んでいるかのようであった。
「植物は、太陽の光を受けて...光合成を行います!そのプロセスで...酸素を...放出するのです!」
鈴木くんの声は、自らの内なる音を打ち消そうとするかのように、教室中に響き渡った。それは必死の祈りのようでもあり、最後の抵抗の
後日談:
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