
短編
2時09分の覗き穴
匿名 2日前
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大学生だったときの体験。
当時神奈川県のワンルームマンションで一人暮らしをしていた。
鉄筋コンクリート造りの8階建て。
しっかりしたマンションだったが、築30年は過ぎていて見た目はちょっと古い。
初めに気付いたのは、二年生の夏くらいだったと思う。
夜のアルバイトから帰宅し、いつも通り午前2時頃にベッドに入った。
ベッドに横になると、ちょうど部屋から簡易キッチンの付いた廊下が見通せるようになっている。
廊下の先はそのまま玄関になっていて、扉の覗き穴から外の共用廊下の灯りが差し込んでいるのが見える。
何気無く覗き穴の灯りを見ていると、一瞬、灯りが遮られた。
「誰か廊下を通ったんだな」
当然そう思い、その時は特に気にもしなかった。
その後、何度か同じように、深夜寝る頃に覗き穴の前を誰かが横切るのを見た。
そしてある時気付く。
「あれ?いつも通る誰かさん、必ず2時09分ぴったりじゃない?」
毎日現れる訳ではないけど、通る時は必ずジャスト2時09分だった。
偶然かもしれないけど少し気味が悪い。
どうにも気になって仕方がないので、ある日、意を決して覗き穴からその誰かさんを確認することにした。
午前2時ちょうど。
覗き穴からはレンズで歪んだ共用廊下が見える。
蛍光灯で明るく照らされてはいるが、誰もいない深夜の廊下は不気味だ。
今日現れるかは分からないが、来なければ別にそれでいい。
2時09分。
視界の左端に、深緑のコートを着た女が現れた。
「こいつだったのか…」
正体を確認して安堵したのも一瞬、すぐに異様なことに気が付いた。
そいつは棒立ちのまま、ゆっくり滑るように廊下を移動していた。
顔を覆うように首元まで伸びる黒髪だけが風に揺れていた。
顔は見えない。
それはゆっくりと、一定のペースで部屋の前を通過し、やがて視界の端に消えていった。
翌日、すぐに100均でドアスコープカバーを買って取り付け、ベッドの位置も変えた。
怖いなんてレベルじゃなかったけど、引っ越しをする余裕も無い。
結局、深夜に外に出ないことだけは徹底して卒業までその部屋に住み続けた。
実は引っ越しの前日、どうしても興味が勝って、カバーを外した状態で深夜2時09分に部屋の方から覗き穴を見た。
やはり同じように、一瞬、何かに灯りが遮られるのが見えた。
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