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お題 中編
赤いちゃんちゃんこ
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赤いちゃんちゃんこ

3時間前
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私の小学校には、「赤いちゃんちゃんこ」の噂があった。

北校舎の三階、女子トイレの一番奥。そこに入っていると、上から小さな声がする。

「赤いちゃんちゃんこ、着せましょうか」

その問いかけに「はい」と答えると、背中いっぱいに赤い血が広がって、まるでちゃんちゃんこを着たように見える。

「いいえ」と答えると、首のまわりだけが赤くなる。

だから、その声が聞こえたら絶対に返事をしてはいけない。そう教えられていた。

噂なんて、どこの学校にもある。私たちも最初は面白がっていた。放課後、友達と三人で北校舎のトイレまで行って、扉の前で「いるー?」なんて笑いながら声をかけた。

もちろん、何も起きなかった。

拍子抜けして帰ろうとしたとき、友達の美咲が言った。

「じゃあ、私、入ってみる」

一番奥の個室に入ると、美咲はわざとらしく咳払いをして、内側から鍵をかけた。

「ねえ、聞こえる?」

「聞こえなーい」と私たちは笑った。

その直後だった。

個室の中で、美咲が黙った。

「美咲?」

返事がない。

ふざけているのだと思って、私が扉をノックした。

「ねえ、もう出てきなよ」

すると、中から小さな声がした。

「……上から」

その声は震えていた。

「上から、聞こえる」

私たちは笑えなくなった。

次の瞬間、個室の中で、知らない声がした。

「赤いちゃんちゃんこ、着せましょうか」

それは子どもの声にも、おばあさんの声にも聞こえた。高いのに、ひどくかすれていた。

私はとっさに叫んだ。

「答えちゃだめ!」

でも、美咲はパニックになっていた。

「いや、いや、いらない!」

その瞬間、ドン、と内側から何かが扉にぶつかった。

鍵が外れ、扉が少しだけ開いた。

中にいた美咲は、床に座り込んでいた。泣きながら首を押さえている。血は出ていなかった。ただ、首のまわりに、赤い手形のような跡がくっきり残っていた。

私たちは先生を呼んだ。

美咲は保健室に運ばれたけれど、跡は夕方には消えた。先生たちは「首を掻きむしっただけ」と言った。でも、私たちは見ていた。あれは自分でつけられる跡ではなかった。指が、六本あったから。

その日から、美咲は学校に来なくなった。

何週間かして転校したと聞いた。理由は知らない。

でも、最後に一度だけ、美咲から電話があった。

夜遅く、家の電話が鳴って、出ると美咲だった。

「ねえ、まだ覚えてる?」

声が遠かった。まるでトイレの個室の中から話しているみたいに、こもっていた。

「何を?」

「赤いちゃんちゃんこ」

私は何も言えなかった。

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